放射能とタバコはどっちが危ないの?

2014年07月10日 18:12

坂本龍一さんが咽頭ガンでしばらく活動を休むそうです。彼はヘビースモーカーだったようですから、タバコが原因になった可能性もあります。もちろん断定はできません。ガンというのはいろいろな原因で起こるので、その原因は統計的にしかわからないのです。しかし国立がん研究センターの調査では、日本でタバコを吸う男性がガンになる確率は64%も増えます。

では坂本さんが「金より命」とか騒いでいた福島第一原発事故の放射能はどうでしょうか。国連の調査によれば「差し迫った健康リスクはない」、つまりこの事故でガンによる死亡率が増えることは考えられないとのことです。

ガンは確率的な現象ですから、絶対に増えないとはいえません。日本人の半分はガンになるので、それがわずかに増える可能性もゼロとはいえないでしょう。しかしその率がタバコの64%より低いことはまちがいありません。つまり福島の被災者のみなさんがこれからガンになるリスクより、タバコを吸っている人がガンになるリスクのほうがはるかに高いのです。

では今後はどうでしょうか。福島と同じような事故が今後、日本で起こる確率もゼロとはいえません(今でも停止中の原発で電源がなくなると危険です)。しかし先進国で最悪の福島と同じ事故がもう一度、起こったとしても、ガンで死ぬ人は出ないでしょう。

史上最悪のチェルノブイリと同じ事故が起こったとしても、犠牲者はゼロに近いでしょう。これも国連が報告したように、チェルノブイリの死者のうち50人は原発の消火にあたった作業員で、10人は放射性物質の入ったミルクをまちがって飲み続けた子供です。大気中に広がった放射性物質ではガン死亡率は上がらなかったので、政府が対応をまちがえなければ被害は防げます。

次に起こる事故は、今までとまったく違うパターンで起こるかもしれませんが、福島やチェルノブイリぐらいの放射能と比べれば、日本だけで毎年9万人も死んでいるタバコのほうがはるかに危ないのです。だから1ミリシーベルト/年まで除染するより、タバコを禁止する(あるいは高い税金をかける)ほうがはるかに多くの命をすくうことができます。

放射能のリスクを大騒ぎする人々のおかげで、原発の近くに住んでいた人は15万人近くが家に帰れず、そのうちすでに900人以上が亡くなっています。坂本さんも入院して時間ができたら、自分のやったことが被災者のためになったのかどうか、落ち着いて考えてみたらどうでしょうか。お大事に。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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