ファンドの社会的機能と投資のオポチュニティー

森本 紀行

金融危機のようなことがあると、一部の企業は、事実上、資本市場から締めだされてしまう。一般に、市場を通じた資金調達が困難な会社は、同時に銀行借入も簡単でないのが普通である。そうなると、経営に差し支える。そこに金融の道をつけてあげるのが、本来の金融の社会的機能ということであり、投資のオポチュニティーは、そこにあるのである。


逆にいえば、伝統的な金融は、規制と既成概念にとらわれて、本来の社会的機能を果たす力が低下しているのである。既成の金融の資金供給能力が落ちても、産業界の資金調達重要が変わらないなら、その溝の補完を行うことが必要である。投資のオポチュニティーは、その補完であり、その補完を行うのがファンドの機能なのだ。

いま、伝統的な資本市場や銀行を経由しないファンドによる代替的資金調達の方法が伸びている。投資の立場からいえば、ファンドのほうへ資金が流れているのだ。投資の本質として、資金は魅力あるほうへ流れる。ならば、なぜ、ファンドに魅力があるのか。

ファンドというのは、オポチュニティーを適確に捉えるものだからである。なぜなら、ファンドは規制されないし、既成概念にとらわれないからである。逆にいえば、規制(同時に既成)の仕組みから排除されたものに対して、自由な発想で金融機能を提供できるものがファンドなのだ。

金融システムの設計においては、規制だけでは道具として不十分なのだ。必ずしも米国流を支持するものではないが、米国では、相対的に銀行機能が小さく、資本市場機能が強力である。加えて、この伝統規制分野の外に、巨大なファンドが存在していて、伝統分野の補完機能を演じることで、オポチュニティーを収益化しているのである。

日本では、銀行機能が強力で、資本市場は規模が小さくて機能も弱いのだから、本来は、ファンドの機能が最も必要とされるはずである。しかるに、ファンドはほとんどない。オポチュニティーが外部化しないからファンドが育たないのか、ファンドがないからオポチュニティーが外部化しないのかは、よく分からないが、現実は、オポチュニティーがあっても、そこに上手に参画する方法がない。

オポチュニティーが投資機会にならないということは、規制(同時に既成)の仕組みから排除されたものには、非常に不都合である。その日本で、いかに、オポチュニティーを見つけ、それを投資可能なものに仕上げていくか、そうすることで金融の社会的機能の補完が適切に行えるか、ここに、これからの日本の投資が挑戦していかなければならない課題があるのだ。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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