「金太郎飴」の日本の住宅建設と国交省の矛盾した古家行政 --- 岡本 裕明

アゴラ

不動産の仕事をしていると住宅についていろいろなことに気がついたり思うことがあります。また、カナダなど北米住宅と日本の住宅を両方見てきて思うこともあります。今日はそのあたりを雑記的に書いてみたいと思います。

年配の人にはあまり良い顔をされない住宅が長屋。平屋で長っ細いアパートで壁一つ隔てて隣人同士とは家族以上の付き合いを余儀なくさせられるというイメージでしょうか? 江戸時代から続いたこの長屋は確かに今ではあまり見かけることはなくなりました。

私も80年代、日本の開発事業の一環で現代風長屋を提案したことがありますが、上司にあっさり却下されました。タウンハウスといえば聞こえは良いものの商売となれば別だということでした。

ところがその長っ細い建物のデザイン、実は日本ではずっと引きずっています。まず、昔流行った二階建てのアパート。外階段に一階、二階それぞれに四軒ずつある様なアパートは街中、どこでも見かけると思います。あれは建物を金太郎飴のように縦切りにしている点で長屋と同じ発想です。しかも、日本の場合、内階段にすると建設費が高くなり、結果としてどこに行っても同じようなデザインのダサいアパートだらけになってしまいました。

次に分譲マンションですが、特に古い物件の場合、縦長の建物を作るケースが多く見受けられます。理由は陽当たり。日本人はまず、南向き、そして東南を好み、北や西向きは嫌います。つまり、デベロッパーがもっとも売れやすい形状として南に窓がある細長い建物を作り続けているのです。

問題はその金太郎飴の中身です。そこに2LDKを設計する際、窓は外向きに一か所。つまり、ウナギの寝床のような細長い部屋を更に縦に切り、採光が取れる窓のある部屋をリビングと寝室としますが、窓のない部屋がどうしてもできてしまうことが多くなります。これは居室として認められないはずですが、結果としてほとんどの購入者は子供部屋なり、お父さんの部屋なりにして居室にしているはずです。要は日本のマンションは建物の形状的に設計の自由度が少なく、魅力的な住宅が作りにくい上に窓がない部屋も居住せざるを得ないということなのです。

一方、ここバンクーバー。高層ビルの数は世界でも有数の663棟あり、世界9位(東京は1185棟で4位)人口比でみれば世界一のはずであります。何故かといえば建物の敷地面積が小さく、鉛筆のような細い建物が林立しているからです。理由は都市計画上の眺望ライン。日本のように横長の建物を作ると眺望が抜けなくなる点を考慮し、太い建物はなかなか許可が下りないのです。次にユニットはワンフロア4~8軒程度と非常に限定されなお且つ、建物の形状に凸凹が多いのが特徴です。これはユニット内のレイアウトの応用範囲を広げるとともに採光の取れる部屋を増やしやすいのであります。
00001

さて、話題は変わりますが、日本の空き家。実に13%以上とのことです。その空家率が高いのが四国(4県が2位から5位を占めています)、中国、九州地方に集中しており、空き家率が少ないのが東北各県という意外な傾向があることに注目しています。メディアはどこも取り上げていないと思いますが、私にはまだ、その傾向の理由がつかめきれていません。なぜでしょうかねぇ。

その古家、壊すと固定資産税が高くなり、壊すに壊せないという事情があります。これは国交省が見直しを図り始めましたのでそのうち、長年放置されている家や防災安全対策上芳しくない家は固定資産税の特例除外になるとみています。その一方で古家を賃貸等に回すという発想もあるようですが、私は運用上、やや疑問を感じます。理由は歴史的建造物ならともかく、単なる古家は震災や耐火、防災上の問題はあるでしょうし、メンテしていない家というのは兎角痛んでいることが多く、トラブルが多いものなのです。

木造住宅の耐用年数を22年としたのは国交省。ならば、それを越えるような古家を再利用するというのは自己矛盾を起こしている気もするのですがさてどうなのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。