アルバニアに“神々"が殺到? --- 長谷川 良

2014年09月04日 08:13

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は9月21日、冷戦時代に最貧国家と言われていたアルバニアの首都ティラナを訪問する。同国のホッジャ労働党政権(共産政権)は1967年、世界で初めて「無神国家」を宣言したが、同国が1990年、民主化に乗り出した後、宗教の自由は再び公認された。その後、同国では国民の間で宗教に関する関心が高まってきている反面、長い共産主義教育の影響は社会の各方面で見られる。


当方は信教の自由が施行された直後、ティラナを訪問し、共産政権下で25年間、収容所に監禁されていたゼフ・ブルミー神父と会見したことがある。神父は「アルバニア人は現世の生活が全てではなく、死後の世界が存在することを肌で感じている一方、若者たちの心を神に向けることは容易ではない。共産主義社会を体験した世代は唯物主義の恐ろしさを知っているが、若い世代は知らないからだ。だから、幼少時代からの宗教教育が必要だ」と熱っぽく語ってくれたものだ。ちなみに、同国では、主要宗派はイスラム教、それにアルバニア正教とカトリックが続く。数では、カトリック教会は約10%で少数派だ(共産政権時代にも同国には“アルバニア教”と呼ばれる一種の宗教的伝統があった)。

バチカン法王庁は、「ローマ法王のアルバニア訪問の目的は民主化後、国家の再建に苦労しているアルバニア国民を慰めることにある」と述べ、フランシスコ法王のティラナ訪問の意義を説明している。アルバニアは宗教人口でいえばイスラム国家だから、ローマ法王が訪問するのは異例だ。バチカンがいうように、「国民を慰めたい」というだけの理由ではなさそうだ。

アルバニアの宗教界に精通する社会学者は「民主化後、20年以上が経過した。西側の資本主義的価値観が押し寄せ、国民は非常に物質的となっている一方、欧州ではみられないほど若者たちの間で宗教熱が高まってきている。世界からプロテスタント系教会の宣教師が続々とティラナ入りしている。文字通り、魚を釣るように新しい信者を捕まえている。正教関係者やカトリック教会は焦っているのではないか」と指摘、ローマ法王のアルバニア訪問がカトリック教会の信者への鼓舞とともに、新しい宗教の進出に対して防波堤を築くことが狙いではないかと受け取っている。

キリスト教社会の西欧では今日、世俗化が進み、消費物質社会となる一方、「神はいない運動」が生まれ、無神論が拡大してきている。冷戦時代、世界に先駆けて「無神論国家」を宣言したアルバニアで逆に宗教が拡大し、多くの国民が宗教に覚醒してきている。無神論国家に神が到来、多数の宗教団体が結集し、“神々の戦い”を始めているのだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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