1999年3月。カルロス・ゴーン氏が瀕死の日産自動車のトップとして着任した時であります。その後、ゴーン氏は辣腕をふるい、下請けの見直し、生産拠点の閉鎖、更にはゴーン氏自身が内外でコミュニケーションを取り続け、ゴーン旋風を巻き起こしました。
一方、コストカッターのごとく、出るを抑えるのは得意だが、入りを増やす新車投入の方に疑義があったもののフェアレディZ、GTRなど個性の強い車を打ち出し、現在でもデザイン的に突出しているジュークなどを投入し、独自の個性を出していました。
自動車業界でのルノー日産連合はロシアのアフトワズを買収することで世界の自動車販売台数で4位、5位グループにつけるなどその経営手腕は高く評価されてきました。
ところが、この1年ぐらい、風向きが変わってきた気がしています。それはゴーン旋風の「風」が吹かないことかもしれません。車のヒット作も少なく、レクサスに対抗する日産の高級車路線、インフィニティも知名度、ブランド力ともまだまだな状態です。
それよりも一番の問題はゴーン氏そのものへの反動でしょうか? 例えば氏の10億円もの報酬(=配当は含みません)は日本でナンバーワンであります。北米では10億円ぐらいの報酬は別に珍しくもなんともないのですが、日本は比較論が大好きなこともあり、常にトヨタと比べてしまいます。その結果、ゴーン氏にとってあまり好ましくない風評がたってしまう結果となってしまいました。その最たるものが「ルノーは儲からないから日産から事業の資金負担に応じてもらう」という一連の流れでしょうか? 勿論10億の報酬もそうです。ルノーの取締役会長も兼任なのですからそちらからも応分でもらえばよいという声が上がっても仕方がないでしょう。
そんな中、上がり始めたのが取り巻きの相次ぐ辞任。ルノー日産連合の広報担当者、日産のインフィニティ責任者そして今回は日産の商品企画担当副社長であります。
一般的に役員クラスの辞任はトップに対する反発ないし、経営の面白味に欠けライバル企業の方がよく見えることからその傾向が出やすいものかと思います。それが相次ぐのであればゴーン体制そのものに軋みが出てきたともいえるのでしょう。
私は経営者の賞味期間をいつも考えています。大ヒットを飛ばしてもその勢いを続けることは極めて難しいものです。例えば最近のゲーム関係の経営者では任天堂の岩田聡氏、グリーの田中良和氏、DeNAの守安功氏(南場智子さんも含め)は明らかに旬を過ぎた感じがするのですが、勢いが強ければ強いほどその反動も大きくなるものであります。その中でゴーン氏は1999年から日産のトップとなり、会社を復活させたわけですからその手腕は偉大であり、その比較になりません。但し、賞味期限が無限の経営者もいないと思っています。
会社はいつも光り輝かなくてはいけないとすれば経営トップがある程度の頻度で変わるか、経営者が常に時代の先端を走り続けられるよう優秀な取り巻きをかかえる必要があります。社員がカリスマという経営者個人が持つ才能と能力に頼り切れば組織が硬直化し、YESマンを増やすだけで成長が止まりやすくなります。
そういう意味ではゴーン氏のトップは一期長すぎたようにも思えます。が、今さら言っても遅いでしょう。ここは我慢の経営で如何に権限を禅譲しながらうまいバトンタッチをするかということになるのでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。