価格情報の使い方と投資の王道

2014年09月24日 11:30

国家の信任に傷が付くことは、国債価格の下落を招くことよりも、より大きく、より深刻に、通貨不信を招きかねないところに、究極の問題が潜む。さて、日本は、大丈夫なのか。財政は事実上破綻していても、政府への信任が揺るがない限り、問題は起きない。しかし、逆に、信任が揺らぐことがあると、一気に危機へ向かうことになるのだが。


さて、ここで、金の特異性が光る。金は、通貨や国債と違って、政府への信認で流通するのではなく、それ自体として価値のある擬似通貨として、取引されるからだ。擬似通貨というのは、本当は、金には失礼なのだ。歴史的は、金こそが通貨の王様、通貨は金の裏づけで発行され、流通していたのだから。

1971年8月15日のニクソン・ショック、ドルの金兌換停止から、もう43年である。しかし、みようによっては、長い金融の歴史のなかでは、まだ43年というべきなのかもしれない。人類の歴史とともに古い金への信任は、おそらくは、今後も変わることはないのであろう。国家への信任は、時々、揺らぐことがあっても。

国家への信任が揺らいだから、金の価格が上昇したのではない。逆に、金価格の上昇に、国家への信任の揺らぎをみるべきなのだ。そもそも、科学としての経済学(投資の理論も、その一部を構成する)は、価格変動から背後の経済動態を説明するものなのだ。

価格理論においては、価格は情報である。価格変動は需給の情報を伝達する。その情報に基づいて、経済行動が誘発され、経済の動態が動く。原油価格上昇は、エネルギー需要の増大を意味する。その情報が、産業界における、エネルギー開発への投資と、省エネルギー化への投資を誘発する。そのような役割を原油価格は、担っているのだ。

金融取引における価格も同様の役割を担っている。ところが、金価格に限らず、為替、債券、株価、いずれについても、注意深くみると、多くの評論は、過去の価格変動の説明と、将来の価格変動の占いに終始している。

投資の理論とは、過去の価格変動の説明でも、将来の価格変動の予測でもない。投資とは、価格変動を情報として、価格変動の意味を考え、資産が本源的にもつ価値(価格ではなくて)を高めるように、適切な資産選択(配分ではなく)をすることである。

金価格は更に上がるから、金を買うのではない。それは、投機である。投資とは、価格変動の事象から、どれだけ多くの情報を読み解くか、そして、読み解いた情報を、資産全体(金や為替だけでなく)の総合管理に、どのように活かすか、そのことに尽きる。

日本国債は、明らかに割高である。しかし、そこから国債価格の下落を予測してはいけない。日本の国家財政の実態的な破綻にもかかわらず、日本の信用秩序が維持され、国債が高値で取引されるという事実(まさに情報)を考え抜くことで、日本の銀行等の金融機関の特殊な位置や、そのことに関連した株式市場の低迷の意味がみえてくる。そのことが、日本に限らず、世界全体の中での資産の選択の基礎になるのだ。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
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