日本型「ムラ社会」の良さを見直してみる --- 岡本 裕明

2014年10月01日 11:30

日本の秋は祭りの季節。池袋の「ふくろ祭り」も男性主体の神輿祭りと女性主体のよさこいに分かれて開催されていますが、よさこいは年々規模が大きくなって今では会場の池袋だけでは収まらず、周辺のJRの駅前もサブ会場になるほどになっています。この「祭り」を見ていると人々はこんなに繋がっていたのかな、と思わせるほど皆の力が集結しています。近所の人、商店街の人、はたまた、近所にある立教大学の学生のお手伝いなどまさに皆が一体となって祭りを盛り上げています。それは見せる祭りではなく参加する祭りであって、やっている本人たちが一番気持ちがよさげであります。


この一致団結、協力姿勢は日本が強くなってきたその本質そのものではないでしょうか? 「一抜け」せず、お前に俺もトコトン付き合うという人間愛はドラマだけではなく日本の社会にはどこでもごく普通に見ることができます。

日経に興味深い編集委員記事が出ていました。題して「吉野家の『非学歴体質』、『やんちゃ』の力が企業救う」。会長になった安部修仁氏は大学中退で吉野家のアルバイトから上り詰めた男として立身出世したわけですが、後任に据えたキーパーソン三人の経歴がユニークだと指摘しています。

「ホールディングス社長で牛丼事業会社、吉野家の社長を兼務する河村泰貴氏(45)は広島県立高校が、取締役でステーキチェーン、どん社長の長岡祐樹氏(50)は大阪市立中学校が最終学歴だ。やはり取締役でうどんチェーン、はなまる社長の成瀬哲也氏(47)は中京大学中退。高卒でアルバイトから社長になった安部氏と同様、いずれも大学を出ていない。」

吉野家のイメージは「トコトンこだわり」で負けない気力と言ったらよいのでしょうか? まさにこういう成功の仕方もあるという日本的ビジネスの代表的存在であります。

北米主流のMBA経営、そして数字による管理、短期的な効果の期待、報酬と株価の連動などは経営者というヒーローを生みやすい半面、その下の組織には陽が当たることはありません。また、グローバル化によるビジネスの濁流の中でビジネスの切り捨て、更に従業員のレイオフもごく普通に行われることを労働市場の柔軟性としてポジティブに捉えています。

いや、日本でも「大学ぐらい出てないと」と大学卒を特別視する傾向があったことも事実です。いわゆる学歴社会であり、偏差値中心で暗記力の教育を作り上げました。

日本の歴史は戦前戦後を通じてムラ社会がその原型であります。寄り合いがあり、皆で話し合い、物事を決定していたそのスタイルは民主的、社会主義的であったとも言えます。現代人は「ムラ社会、何それ?」というかと思います。しかし、2004年から始まったミクシィがあれほど流行ったそのきっかけは10代、20代の女性が繋がっていたいという気持ちを持っていたことをSNSとしてビジネスに落とし込んだものであります。皆さんのおつきあいしている方々は会社の同僚、学校時代の同級生、クラブ活動した仲間、近所など一定の連関性をもったグループが多いかと思います。これも言い換えれば一つのムラではないでしょうか。

吉野家はその中で企業というムラを作り上げたのかもしれません。吉野家のビジネスモデルはストレートであり、メニューも限定され特に複雑ではありません。そこにあるのは顧客とスタッフの接点を重視した姿勢であります。例えば食券購入の自販機がないですからお客さんは「発声」しなくてはいけません。スタッフはそれに答えなくてはいけません。そこにはわずかながらもコミュニケーションが生まれているのです。

そのコミュニケーションは吉野家ファンを作り上げる原動力だとしたら言い過ぎでしょうか? しかし、その一体感こそ日本の本来のビジネスのベースであったはずです。

今や商店街を知る人も案外減ってきたのかもしれませんが、肉屋や八百屋で商品を買うのは結構骨が折れます。とにかく、しゃべらなくてはいけないのです。「奥さん、このひれ肉、今日は特売だよ。」とか八百屋のオヤジが「はい、大根一本ね。100万円のお預かりー!」などとザルに手を伸ばしているシーンを見かけることはもはやなくなったと言ってもよいでしょう。

そこにあるのはファンを作り上げるというスタイル、そして経営者の汗をかく努力ではないでしょうか?

都内を見れば財布より大事な社員証を首からぶら下げたサラリーマンが立派な高層オフィスビルに吸い込まれていきます。それは社員をアイデンティファイするものが社員証だけという寂しさともいえましょう。一方で祭りになれば一年に一度、仲間たちで神輿を担ぎ、酒を煽り、盛り上がる日本伝統があり、吉野家に行けば「並一丁!」という掛け声に元気すらもらったりします。

日本のビジネスにはこんな見方もあることをもう一度考え直してみるには良い機会なのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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