変る農業、日本の未来を考える --- 岡本 裕明

2014年10月21日 10:20

大げさなタイトルをつけましたが、実は日本にとってとてつもない大きな課題となるのがこの農業変革であります。今日は大きなピクチャーで農業を捉えてみたいと思います。


新幹線に乗って都心を抜けた頃、車窓からたちまち目にするのは水田でしょうか? その景色は都会や地方都市の一部のビルの景色や山や海の眺めよりもはるかに中心的なバックグラウンドとなる絵図であります。そこから取れるコメの消費量は昭和37年ごろは一人一年あたり118キロもありましたが今では50キロ台と55%程度下がっています。理由は米食からパンやパスタ、うどんなど小麦系の消費がふえ、バラエティに富んだ状態になっているから、とも言えましょう。この凋落状況は右下がりの直線傾向が強く、大体一年に1%ずつコンスタントに下がっていると言われています。

今後、米食に慣れた高齢者からパン食に慣れた世代にバトンタッチすることも考え合わせればこの傾向がすぐに反転することはなさそうです。ただ、健康やカロリーを考えれば米食のほうが小麦よりはるかに良いわけで政府はこのあたりの切り口で若い人やメタボの人の健康管理を提唱したら良いとは思いますが。

話を戻しましょう。消費が少ないコメの価格が下がるのは当然の帰着であり、米作農家が受け取るお金は驚くほど下がってきています。今年の農協が示した買い取り価格は千葉産コシヒカリで60キロ当たり9000円と昨年比2700円少ない(日経)とのことです。農協の買い取り価格が下がるならば非農協の流通市場でも同じことは起きるわけで農家としては「ばかばかしくてやっていられない」という事になります。その一方で食料自給率にこだわる農水省としては過度な補助金を出してでもこの凋落傾向を止めようと躍起になっているのが相も変らぬ現状であります。

となれば、ただでさえ高齢化が進む農家において休耕地を増やす状態を止めるのは極めて難しい状態となります。

さて、ここで疑問なのですが、農水省は食料の自給率を考え、安定した生産を通じて国民に食の不安を持たせないことを目的としているかと思います。しかし、これは自給率の主体であるコメを無理くりでも生産することでその面目を保つというようにも聞こえます。

では、10年後にコメ作りが植物工場でできるようになるとしたらどうでしょうか?

植物工場といえばレタスなど葉物を思い出すかと思いますが、今、日本の各社、それこそ、東芝からトヨタまで競って農業を一つの産業としてとらえて、農業革命に向けた開発が進んでいます。コメの植物工場化も技術的には難しいわけではなくコストが合わないだけであります。よって、今後、技術革新とコストダウンが進めばコメを植物工場で生産することはあり得ない話ではないのです。というより、実現化するために日夜研究者が努力しているとしておきましょう。

仮に植物工場が農業の中心的存在となり、コメも工場で作られるようになったとします。何が起きるのでしょうか?

食の自給率は大いに上がるはずです。それからその頃には植物工場が産業用と家庭用に分かれていて、家庭で必要な葉物などの栽培は自分でやる家が増えていくだろうと考えられます。つまり、国の自給というより消費者ベースの自給率の時代が到来すると言ってもよいのです。価格も今よりより下がるでしょうし、何しろ無農薬野菜となるわけですから健康的にも非常に優れているわけです。

ここまでは実にバラ色の話ですが困ったこともあります。

コメが食物工場で作られること。それは冒頭の車窓からの水田の風景が消えるという事です。

私の勝手な予想ですが、農業の産業化は恐るべきスピードで進んでいくと考えられます。10年後には予想だにしなかったことが起きていてもおかしくないでしょう。その時、農水省が自給率の向上という今のままのポリシーで行くのかどうかということと休耕、廃耕になった農地をどうするかという切実な問題が出てくるのであります。

先日、ある司法書士のセミナーがあり、多くの参加者が不動産の相続について質問をしていました。その際、農家の相続という質問もあり、興味深く考えさせられました。「親の農地や農地内の実家の価値は二束三文、買い手もいないし、将来継ぐ予定もないのにこんなもの相続したくない」というものでした。かと言って国がその土地を積極的に貰ってくれるかといえばそうでもない可能性もあり、農業を営まない子供たちにとって将来が予見できない時代ともいえるのです。

そして、あちらこちらに休耕地ができれば日本の耕作地帯は荒れ地と変わり、治水をはじめとする安全対策や国土交通省の管轄である日本の国土利用計画そのものを全て見直さなくてはならなくなるのです。それこそ、その広大な土地で畜産業でもやるのか、という話になってしまうのです。

つまり、今は農水省の管轄でとらえられる事象でも農業の産業化が本格化すれば確実にやってくる日本全体の大きな問題となるのです。

農業の産業化の進歩は早く、経済産業省もそれにブレーキをかけることはないでしょう。ならば、各省庁間で様々な問題が噴出してくるのです。極端に安く設定されているものの農地の固定資産税の問題は財務省の管轄となるはずです。上述の国土利用は国交省の問題です。つまり農水の管轄では到底収まらなくなるのです。

変わる農業がもたらす影響は計り知れなく、われわれが目にする車窓からの景色も変わらないとは言い切れない時代となったともいえるのでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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