11月は安倍政権の正念場 --- 岡本 裕明

アゴラ

この数日の間メディアによる内閣支持率の世論調査が発表になっていますが、支持率低下が顕著になっている傾向がはっきりと出ています。折しも安倍首相はインタビューで「難題山積」と述べていましたが、その言葉通り、首相就任以来、かつてない厳しいかじ取りと運営が待っているように思えます。

日経の調査では消費税の再引き上げに賛成はわずか23%、反対が70%となっています。トレンドを見ると賛成のボイスが急速にかき消されたのが7月以降。私もちょくちょく日本に行っていた中で「あれ?」と雰囲気の違いを感じ始めたのはその頃であります。


4月の消費税引き上げについては「アベノミクス祭り」と前回の二の舞にならないよう企業側が周到な準備をしていたこともあり、4月、5月の落ち込みは予想に比べて軽微というニュアンスでした。これは日経などの記事の見出しにもその論調が強く押し出されていました。

ところが、貿易赤字が顕著に悪化していった頃から消費者の財布のひもが固くなった感じも出てきました。更にそれを後押しする形になった最近の円安で来年以降の輸入物価の上がりやすさが後押ししていることも遠因の一つかもしれません。その上、4-6月のGDPは速報の6.8%マイナスから9月8日には下方修正でマイナス7.1%となったことが政府関係者に大きな衝撃を与えています。

では現実の消費税再引き上げはどうなのか、といえば、上げることありきで法案が出来ていますので止めたり延期する場合、手間がかかり、ひいては再議論する余地を与えることになり、それこそ難題山積の安倍政権として絶対に避けたいはずです。これが消費税再引き上げは政治的理由で経済的影響は二の次とされる理由です。

安倍首相がそれを強引に進めるかどうかは11月17日の7-9月GDPの第一次速報に大きく委ねることになりそうです。特に対策という意味では11月17日の速報値が思わしくなければ金融緩和の追加を含めたパッケージを打ち出さねばならないでしょう。

株価が年末に向けて上がるだろうと言われているのは実はこのパッケージ期待であり、既に消費税再引き上げに首をかしげる国民が多数を占めているのであれば国民に「それなら仕方があるまい」と思わせるお土産が絶対に不可欠とみられているのです。

安倍政権も2013年の様に圧倒的な「ノリ」がもはやないわけですから自分の思い描くようなピクチャーが通りになるか、といえば案外苦しくなってくるかもしれません。とは言っても今、安倍首相以外にこの難局を乗り越えられるような期待が持てる政治家がいませんのでここは政治生命をかけてでも踏ん張っていただくしかありません。

11月はこの消費税の引き上げを占うGDPの発表以外に安倍首相にとって将来を位置付ける月になるはずです。

まず11月北京でのAPEC開催の際、習近平国家主席との首脳会談の可能性。これは行われる可能性が高いとみています。福田元首相が今週、習近平国家主席と会いますが、これは中国側からの招聘であり、事務的な下打ち合わせを更に推し進めているわけですから余程の差し違えでもない限り、実現するでしょう。問題はその中身で双方が前向きな姿勢とプランを見せれば経済効果は高いと思います。私はかなりのサプライズが出てくる気がしています。

次いでTPPも首脳級会合が11月に開催され、その行方が注目されます。但し、これは日本側のドライブというよりアメリカ、オバマ大統領が11月4日の選挙でどうなるか次第とみて良いでしょう。注目のアメリカ上院改選では民主党が過半数を維持できない可能性が高まっており、仮にそうなればオバマ氏のレイムダックは顕著となり、TPP交渉にも当然差支えが出ることになります。

間接的には先週あたりから本格化している企業の7-9月決算の状況も注目すべきかと思います。既にトヨタなど自動車各社はかなり良好な結果が期待できそうですが電機はシャープなど下押ししているところもあり、全体的に景気の回復感が企業レベルでみられるかどうか重要な判断どころだと思います。

既にアベノミクスに過大なる期待をする向きは消沈していますから小手先の細工ではなく、公表した方針を実務レベルまできちんと落とし込むことに専念してもらいたいと思います。特に国家戦略特区についてどうなっているのか、さっぱりであり、これは不安であります。私は国家戦略特区の詳細内容を受けて日本への投資を更に進めるかの判断を下すところですが、海外から見ればそのような企業や投資家は多いはずです。早めの展開が待たれます。

このところ閣僚の裏側のばかばかしい話が続きましたのでいい加減にそんなタブロイド版的なネタから本論に移っていただきたいというのが私の真摯たる願いであります。

今日はこのぐらにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。