新興国と日本、不動産投資で成功しやすいのはどっち? --- 内藤 忍

アゴラ

スタディ・ツアーでバンコクの不動産視察を行いました。写真は、視察に出かける前に、参加者と物件案内をしてくれたステイジアキャピタルの吉岡さんを交えた作戦会議です。この日は全部で7つの物件を見学。既に完成しているものもあれば、まだ、モデルルームさえ出来ていない真新しい物件もありました。タイに限らず、新興国の不動産には、日本とは違う魅力がいくつかあります。


新興国の不動産に共通していることですが、プレビルドと呼ばれる完成前物件を購入する場合、販売が進むと共に価格が上昇していく傾向があります。フランスのワインのプリムールのように、最初の売り出し価格で販売が好調だと、ディベロッパーが強気になって、3か月も経たないうちに価格を上げてくるのです。先月までの価格と今月からの価格が違っているといったことが珍しくありません。

建設が進むと共に、完成リスクも減っていきますし、金利負担も小さくなりますから、その分価格が上昇するのは、理にかなっているとも言えます。タイミングを逃すと、安く買えるチャンスを逃してしまうのです。今回視察した物件も、人気のあるコンドミニアムは5か月前に視察した時と比べ値上りしていました。

また、日本の不動産と異なるのは、為替の影響を受けるという点です。先週、円安ドル高が進み、新興国通貨も円に対して上昇しています。タイバーツ、マレーシアリンギ、フィリピンペソといった通貨が上昇すれば、現地価格が変わらなくても、円ベースの価格は上昇していきます。将来、海外不動産を購入する予定のある人は、物件が決まっていなくても、FXを使って外貨の買いポジションを作っておけば、将来の円安リスクをヘッジできます。

そして、新興国の不動産と日本国内の不動産の3つ目の違いは、新興国不動産は「ベータ」を狙うことができるという点です。ベータというのは、市場の平均のことです。マーケット全体が上昇していく傾向がある市場であれば、どの銘柄に投資しても、リターンを得ることができます。インデックス運用と呼ばれる運用手法は、市場の平均値を狙う投資ですが、市場平均が長期的に上昇していくことを前提にしています。新興国の不動産も長期的に見れば、同じような傾向が予想できるのです。

タイの不動産を買うか、カンボジアの不動産を買うか、といった「エリア選択」よりも、「新興国不動産に資金を置いておく」ことによって、新興国の成長の恩恵を来たいできるということです。海外というハードルはありますが、それを超えてしまえば、マーケット自体の魅力は大きいと言えます。

新興国の不動産とは対照的に、日本の不動産は市場全体の成長をあまり期待できません。全国の賃貸物件の平均空室率は20%。東京だけでも10%を超えています。人口減少と経済成長率の低下によって、日本全体で不動産価格が上昇する可能性は、低いと言えます。全体の上昇を前提とする「ベータ」投資が、ワークしないのです。

だから日本の不動産は、どこに投資するか、どの物件を選ぶか、によって大きな差が出てきます。目利きが出来ない初心者が、我流で投資をして、思いがけない展開に巻き込まれるのは良くあることです。

海外不動産と日本の不動産には、それぞれの特徴があるということです。どちらが良い悪いではなく、それぞれのマーケットの違いを理解し、自分の合った投資対象を選択していくことが大切です。

今日はこれから、タイのシラチャに出かけます。スタディ・ツアー参加者の方に、「価値>価格」の情報提供ができるようにしたいと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。