プーチン大統領の“新しい"友達 --- 長谷川 良

2014年11月30日 21:29

小学生時代を思い出す。友達が多い子供がいる一方、一緒に通学する友達もいない淋しい小学生もいた。当方はほどほどの友達がいたほうだが、いつも独りでいる同級生を見て、可哀想に思ったことを覚えている。

ロシアのプーチ大統領はウクライナのクリミア半島にチョッカイを出し、同国東部の親ロ派の軍事活動を支援している、ということで欧米諸国から厳しい批判の声が出ている。そのためか、G20など国際首脳会談では友達がいない小学生のように孤立しているシーンも見られた。もちろん、演説はするし、公式行事には顔を出すが、その表情には少々寂しさを感じさせたのだ。


しかし、KGB出身のプーチン氏は困難な時ほど強い。友達がいなければ見つけ出す努力をするタイプだ。影に隠れて恨み、つらみをこぼすような陰湿な性格ではない。友達を探すだけではなく、いなければ友達になってくれそうな政治家、指導者を買う努力すらする。

ここからいよいよ本題に入る。ロシアのプーチン大統領は欧州の極右政党指導者を招いたり、その政党に資金など提供し、間接的な形で支援していることが明らかになった。プーチン氏から最初に声をかけられたのはフランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン党首だ。ロシア系銀行(FCRB)を通じてかなりの額の資金が同党に流れたといわれる。もちろん、同党はその報道を否定しているが、かなり信頼性があるニュースだ。

フランスのル・ペン氏だけではない。オーストリアの第3政党、野党第1党自由党もここにきてモスクワに党使節団を派遣するなど、モスクワとウィーン間で人的交流を活発化している。オーストリアは元々ロシアとの関係は悪くはなかったが、野党政治家がモスクワ詣でする、ということはこれまでなかった。その背後に、友達を求めるプーチン氏の必死さが感じられるのだ。

オーストリア日刊紙プレッセによると、ロシアに接近中の西側極右政党としては、国民戦線、自由党のほか、ドイツ国家民主党(NPD)、ブルガリアのアタカ国民連合(Ataka)、ハンガリーのヨビックなどの名前が挙げられている。ハンガリーの場合、与党フィデスのオルバン首相自身がEUのブリュッセルではなく、モスクワに目を向けているといわれるほど、プーチン・ファンで知られている。曰く、欧米諸国を相手に決して媚ないプーチン氏の一貫性のある政策を支持するというのだ。

それではプーチン氏の狙いはどこにあるのだろうか。ズバリ、対ロシア制裁を米国と組んで実施する西側諸国の分断だ。すなわち、西側諸国内に親ロシアの指導者を多く抱えることで、EUの結束を崩し、ひいては対ロシア制裁の弱体化を図るというものだ。

一方、プーチン氏の新しい友達となった西側の極右政党の目的は何か。落ちぶれたといえ、依然軍事大国のロシアとの繋がりを構築することは野党政党としては拍がつく、というものだ。それだけではない。プーチン氏の伝統的、民族主義的世界観に惹かれている気配が見られる。例えば、同性愛者問題では「それは違う」と堂々と発言する政治家は西側では極右政党以外にないが、プーチン氏は同性愛者問題で終始、反対し、「夫婦は男女の結婚によって成り立つ」と自信をもって発言する。だから、西側の極右政党はプーチン氏に共感を覚えるわけだ。

プーチン氏と西側極右政治家との新しい友人関係は将来、どのように展開していくだろうか。プーチン氏の狙い通り、欧州は反プーチンと親ロシアに分裂するだろうか。それとも、束の間の関係に終わるのだろうか。

ここでは少し付け加えておく。このコラム欄で「独露の“ホットライン”が凍る時」(2014年11月20日)という記事を書いたが、プーチン氏は西側の極右政党との関係だけではなく、バルカン半島の正教圏に急接近中だ。プーチン氏は欧州全土で新しい米国との冷戦時代に備え、手を着実に打っているのだ。オバマ米大統領はグズグズしているとプーチン氏の戦略に翻弄されてしまう危険性が出てくる。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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