どうなる「アベノミクス解散」と「大義なき選挙」その結末 --- 關田 伸雄

2014年12月02日 18:41

本日、第47回衆院選が公示され、投票日である14日に向けて与野党の舌戦が続くことになる。

消費税率の10%への引き上げを当初予定(2015年10月)から1年半先延ばしにする決断の是非を問うとともに、「アベノミクス」と呼ばれる経済政策への支持・不支持を問う──。安倍晋三首相は衆院解散を表明した11月18日夜の記者会見で、その「大義」をこう説明した。


そのうえで、アメリカ独立戦争当時に言われた「代表なくして課税なし」という言葉まで持ち出して、「国民生活に大きな影響を与える税制において重大な決断をした以上、また、私たちが進めている経済政策に賛否両論や抵抗がある。その成長戦略を国民の皆様とともに進めていくためには、どうしても、国民の皆様の声を聞かなければならない、と判断いたしました」と、この時期の衆院解散に理解を求めた。

前回選挙から2年。任期半ばの解散に与野党双方から批判や不満が出たのは、首を切られた身からすると仕方ないことなのかもしれない。

大手マスコミの社説を含めて「大義がない」という言葉が乱れ飛んだのをご記憶の方も多いと思う。

「アベノミクスがうまくいかずに内閣支持率が低下しているため、このタイミングを逃すと解散できなくなる恐れがあった」「野党側の準備が整わない年内解散が有利と判断した」「安全保障法制の整備や原発の再稼働が本格化する前の解散を選んだ」など、いろいろな批判が新聞やワイドショーを含む情報番組のコメンテーターによって流布された。

この結果なのだろう。安倍政権に批判的な朝日新聞社が11月19日と20日に行った世論調査では、この時期に解散することに「反対」が62%で、「賛成」の18%を大きく引き離し、安倍政権に理解があるとされる産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が同月22日、23日に実施した調査でさも、「解散を適切だと思わない」が72.2%に達し、「適切だ」の22.8%を大幅に上回った。

首相会見を誰も見ていなかったか、首相の言葉を受け入れなかったかのような数値だと言っても過言ではあるまい。

前回衆院選で自民党は、2014年4月に消費税率をそれまでの5%から8%に引き上げ、15年10月に10%に再引き上げすることを政権公約(マニフェスト)として掲げた。

経済政策では、デフレ・円高からの脱却を最優先課題と位置づけ、「大胆な金融緩和策や税・財政政策、成長戦略などあらゆる政策を総動員し、名目3%以上の経済成長を達成する」と明記している。

安倍政権下の消費税率引き上げと「アベノミクス」は、この政権公約を土台にしている。土台が崩れた以上は国民の審判を仰ぐ──。それが「憲政の常道」とされてきた。政権側の公約違反を野党側が追及して衆院解散を迫るのが常識だった。

野党側にとって政権交代の可能性が常に存在する衆院解散は要求すべきものであって、批判すべきものではないはずだ。 審判を下すのは有権者であって当事者たちではない。

さすがにそのことに気づいたのか、野党側も解散後は「アベノミクス」批判に方針を転換した。

民主党は「アベノミクスからの転換で、厚く、豊かな中間層を復活させる」との公約を発表したが、経済政策の内容は「国民生活に十分留意した柔軟な金融政策」「生活の不安を希望に変える人への投資」「未来につながる成長戦略」と抽象的なものにとどまっている。

首相も自ら認めているように、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の、いわゆる「三本の矢」を柱とする「アベノミクス」には、賛否両論が渦巻いている。

NHKの世論調査(11月7~9日)でも、「まったく評価しない」11%、「あまり評価しない」37%、「ある程度評価する」43%、「大いに評価する」4%と評価が分かれ、産経新聞社などの調査では「アベノミクスが成功しているとは思わない」が60.7%で、「成功していると思う」の27.2%を大きく上回った。

首相がいくら自信家だったとしても、評価が分かれる政策、どちらかというと国民の多くに恩恵が実感されていない政策を争点に衆院選に踏み切ることを「有利」だとは考えられまい。
しかし、安倍首相はあえて信を問う道を選んだ。

「アベノミクスに対して『失敗した』『うまくいっていない』という批判がある。しかし、では、どうすれば良いのか。具体的なアイデアは、残念ながら、一度も聞いたことがありません。批判のための批判を繰り返し、立ち止まっている余裕は、今の日本にはない」

「デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするためには、たとえ困難な道であろうとも、この道しかありません。景気回復、この道しかないんです」

記者会見でそう訴えた首相の言葉が、野党側の批判をはね除けて有権者の心に響くかどうか?。

結果は14日に出る。

關田 伸雄
政治ジャーナリスト


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年12月2日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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