IT政策の動向と展望(2)これからの課題 --- 中村 伊知哉

2014年12月04日 08:32

スタンフォード大学と共同開催の「IT政策研究会」にぼくが提出したペーパー「IT政策の動向と展望」の第2項、「これからの課題」です。問題提起まで。


競争環境の整備、ユニバーサルサービスの確保、コンテンツの生産・利用の拡大といった従来の課題に加え、新しいIT環境で想定される政策課題を挙げてみる。

1) 利用環境
 社会経済でのITの浸透を高める対策と、それが引き起こす課題への対応が求められる。

・デジタルファーストの限界
 教育・医療・行政の情報化、ネット投票など現実社会での活動がITでも行われること、ないしはITのみで行われることに対する制度的な限界にどのように対応するか。

・商取引・通貨のオンライン化の限界
 電子商取引やネット通貨の広がりは、消費者保護、通貨管理等の観点から政策的なコントロールを要するか。

・急激な産業構造の変化
 旧来のアナログ産業が急速に競争力を失う事態に対し、政策対応が必要となるか。

・ITによる混乱の増加
 ネット犯罪の高度化、ネット炎上の激化などにより、社会面・経済面の混乱が増加する事態に対し、政策の出動が増加するか。
 
・公共と個人の均衡
 公共データのオープン化を進める一方でパーソナル情報の利用をどの範囲まで認めるか、著作物のフェアユースをどの範囲まで広げるかなど、情報の公共性と個人の権利との均衡はどのあたりに求められるか。

・ 情報リテラシーと自己責任
 生活の主要部分がITで賄われることから、情報リテラシーの格差が重大な問題となる一方、IT利用のトラブルに対する自己責任の範囲も問われる。その政策対応は重要性を増すか。

2) 新コミュニケーション技術
 人と人とのコミュニケーションや映像・音声コミュニケーションだけでなく、ユビキタス、人工知能、M2M、ロボットなど新種のコミュニケーション技術が引き起こす新たな課題への対応が求められる。
 
・常時撮影、常時配信の権利と責任
 ウェアラブル・コンピュータなどにより、常に見る・見られる状況、常にそれらが共有・蓄積・利用される状況が技術的に容易になることに対し、整理が必要となるか。

・バーチャルエージェントの権利と責任
 自分を代理するソフトウェアがネット上で発信・発言する内容、ネット上で自律的・機械的に行われる行為が増加することに対し、整理が必要となるか。

・モノの権利と責任
 ネットで連結したロボットや自動運転車などの行動が生み出す成果と引き起こすトラブルについて、整理が必要となるか。

3) 国際化
 グローバル化がもたらす課題への対応が求められる。

・国家政策とグローバル企業の力学
 IT・知財規制、税制その他の法的ルールは基本的に国ないし地域別に講じられている。これに対し、ITサービスを国際的に提供するグローバル企業にそれぞれのルールをいかに適用するのか。あるいは別の枠組みの国際的なルール化や体制が必要となるのか。

・国際共通ルールと国内ルールの整合
 知財利用・保護、通貨制度等を巡り、多国間・二国間でのルール化や議論が進められている。国際共通ルールが重みを増すのか。各国のルールとの整合をどうとるのか。

・文化産業政策の強化と限界
 日本政府がクールジャパン政策に力を入れるように、各国が文化産業力の海外展開を助成することが是認されるのか。各国が他国文化の流入を阻止することが是認されるのか。その均衡はどのあたりに求められるか。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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