民主主義って何?

2014年12月12日 13:55

衆議院解散のとき、安倍首相は「代表なくして課税なし」といいました。これはアメリカ独立革命のときのアメリカ側の主張で、「植民地はイギリス議会に代表を送り込んでいないのに課税するのはおかしい。課税するなら参政権を与えろ」という意味で、安倍さんは意味をとりちがえています。


このことばは、近代の民主主義が課税の問題から生まれたことを示しています。しかし民主主義は、みなさんが学校でならう「国民が主人公になって政治を決める」制度ではありません。この英語は「デモクラシー」で、その語源は古代ギリシャ語の民衆(デモス)と支配(クラティア)です。つまり「民衆支配」ぐらいが正しい訳でしょう。

アメリカの独立革命も、今度の総選挙のようにすべての大人が有権者として民主主義で選んだ議員が起こしたものではありません。当時は普通選挙ではなく、女性には選挙権もなかったのです。歴史上、全員参加の民主主義で行なわれた革命はありません。

みなさんは学校で「民主主義」がとてもいいものだと教わると思いますが、国民が自分で決めるのがいいなら、国民投票が一番いいでしょう。今はインターネットが発達しているので、国会なんか廃止して、国民がネットで法案に賛成か反対か、決めればいいのです。そういう直接民主主義が理想だという人は(ネットに)よくいます。

しかし国の決定をすべて国民投票でやったら、どうなるでしょうか。たとえば1941年の日本で「アメリカと戦争すべきか」という国民投票をやったら、99%が賛成したでしょう。2011年4月に「原発を即ゼロにすべきか」という国民投票をやったら、これも99%が賛成したでしょう。

同じように増税を国民投票で決めたら、永遠に増税できない。今回も安倍さんはどうやって財政を再建するか、何も計画を示していません。このままでは10年以内に金利が上がり、財政も金融も破綻するでしょう。そのとき一番こまるのは、ポリタスでも書いたように、年金で生活しているお年寄りです。若い人は働けば生活できますが、インフレで貯金は大幅に目減りし、年金は止まるかもしれません。

つまり国民が自分の選択の結果について、正しい知識をもっているとは限らないのです。多くの国民はいつも政治のことを勉強しているわけではないので、まちがえることが多い。むしろ日本の憲法は、政治をなるべく国会にまかせ、国民が直接ものを決めないようにつくってあるのです。国民投票は憲法改正のときだけで、すべての立法は国会が決めるしくみです。

これはアメリカの憲法と同じです。上院と下院は別々に選挙して「ねじれ」が起こりやすく、直接えらばれる大統領には議会の決定を実行する権限しかありません。宣戦布告も予算編成もできないのです。その選挙も、わざわざ大統領選挙人を選ぶという形で、民衆が政治を支配しないようになっています。

こういうしくみは不合理にみえますが、このように国民を信用しない制度設計をしたので、アメリカの憲法は250年近くもってきました。日本国憲法も同じようになっていますが、最近は内閣支持率や世論調査が政治に大きな影響を及ぼすようになってきました。

安倍首相は、こういうポピュリズムをうまく活用している政治家です。「輪転機ぐるぐる」回しても物価は下がり、マイナス成長になってきましたが、ほとんどのの国民は物価統計も国民所得統計も知らず、日経平均ぐらいしかみていない。民主主義では、国民をバカにした政治家ほど選挙に勝てるのです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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