きょう発売です。最初のQ&Aの一部をご紹介します。
Q すごい厚さですが、要するに何が書いてあるんですか?
原著を手に取った読者はそのボリュームに圧倒されると思いますが、内容はそれほど難解ではありません。これが話題になったのは、欧米諸国のマクロ経済データを10年以上かかって集めたからで、主張は単純です。資本主義では歴史的に所得分配の格差が拡大する傾向があり、それは今後も続くだろうということです。
Q それだけのことに、なぜ969ページ(英訳は696ページ)も必要なんですか?
「資本主義は不平等になる」というだけなら簡単ですが、ピケティの研究が注目されたのは、統計の不十分な19世紀以降のデータを各国の税務資料などをもとにして、いろいろな方法で推定し、ヨーロッパの主要国やアメリカのマクロ経済データを比較したからです。
こういう超長期の問題については、統計データが少ないことから十分な研究がされてきませんでした。たとえばイギリスでは、イングランドとスコットランドとウェールズとアイルランドがバラバラに税金を取っていたので、「イギリスのGDP」を推定するだけでも大変です。
その結果、ほとんどの時期で不平等は拡大しており、戦後の平等化した時期は例外だったというのが、彼の結論です。
Q 19世紀の所得や資本をどうやって測定したんですか?
当時は、もちろんGDPという言葉も資本ストックという言葉もないので、それを書いた資料はありません。そこで、税務資料が最大の手がかりだったようです。
たとえば所得税の資料から所得を推定でき、固定資産税から地価を推定できます。これは思いつくのは簡単ですが、19世紀には国家としては集計されていない場合が多いので、各地方に残る古文書を発掘しました。
これは彼の所属するパリ経済学院のスタッフを使って10年以上かけて行なわれた作業で、当時の税務データなどを収集し、欠けたデータを推定で補って、各国の資本ストックやGDPや資本収益などを集計し、歴史的な傾向をみたわけです。
もとのデータは穴だらけなので、それをつなぎ合わせるときには、問題が起こります。その推計手法やデータの信頼性について専門家から批判もありますが、今のところ彼の基本的な主張をくつがえすほどの決定的な誤りは見つかっていません。
Q その結果、どういうことがわかったんでしょうか?
これは最後の「結論」に要約されています。ピケティの主張は次の資本主義の根本的矛盾と呼ばれる不等式で表現されています。
r>g
ここでrは資本収益率、gは国民所得の成長率です。ピケティは「資本」という言葉を広い意味で使っているので、rは株式や債券や不動産など、すべての資産の平均収益率です。他方、gは国民所得の増加率ですから、この式は「資本収益率が成長率を上回る」ということを示しています。
本書は普通のビジネスマンにもわかるように超簡単に書いたので、物足りない人にはサポートページもあります。