日本の「不動産業」はなぜ変われないのか --- 岡本 裕明

2014年12月17日 10:38

日経電子版のある記事を読んでいて腹が立ちました。「40歳くらいのとき、いわゆるアーリーリタイアメントをめざして会社をやめました。不動産に投資して、不労所得で生きていこうと考えたんです。」と。不動産を業としている人にとってこれは失礼極まりない発想でまるで不動産業は楽チンして金を儲けているという先入観さえ植えつけます。


私の周りでマンションや貸し家をして「不労所得」を得ている人は日本にもカナダにもたくさんいます。しかし、その人たちといわゆるプロとはどう違うのか、といえば利益率や経営効率が全く違います。アパート経営をしませんか、と持ちかけられ、借金して建てたアパートは一括借り上げ等で何の労もなく家賃収入が入ってきて、不動産収入は儲かる、と思っている方は気をつけた方がよいかもしれません。

その「借り上げ保証」には高いフィーが含まれていたり家賃の基準設定、リフォーム計画などを勘案する必要があり、それを黙って業者に任せてしまうのか、自分で努力するのかで全く変わってくるものです。努力すれば不労所得ではなく少しは労働所得になるかもしれません。

新聞に一面広告を使ってアパート投資を促す広告がありました。「100万円で2億円の資産を」と。よく見ると利益が確かに出ています。ですが、借入金の元本返済がどこにも表れていません。新築で満室の時はよいのですがキャッシュが長期で回るのか、よく考えてみるべきです。そんなバラ色は普通はありません。

自分で運営して一年に500万円も家賃収入があるとしてもそれを10年、20年と途切れなく続けるのは相当の苦労であります。アパートは満室にならないところや家賃の取りぱっぐれもあるでしょう。家を汚く使われて、その補修費は保証金で足りないかもしれません。退去すれば不動産屋に一声掛ければ自分の役目は終わったとばかりになるのですが、古くなったアパートは案外入居者が決まらないのに不動産屋への報酬は高いものです。

ではその不動産屋。日本と北米の圧倒的違いは日本は組織内のサラリーマン不動産屋ですが、北米は基本的に一匹狼であります。所属事務所の社名こそありますがその会社から得るものはほとんどないと考えて結構です。だから不動産屋の名刺は選挙用ポスターの笑顔ごとくにこやかな修正を施した写真入りです。「ん、うそやん!」と思わず実物と見比べることもかつて何度もありましたが。北米は本当に親身であります。そして付き合いは何年も続くところが日本と違います。なぜなら日本の担当者はすぐに転勤してしまいますから。

不動産を探す客側からするとネットで絞り込んでも最終的には不動産屋に辿りつくようになっています。「業法」がありますから縛りがあるのです。一旦そこに入ればこれほどワクワクさせず、面白くない説明を聞かされるのは不動産屋ぐらいで現代ビジネス社会からもっとも遅延したスタイルを維持しています。これは購入者なり借りる人が不利益を被らないために法律でギチギチに縛りこんでいることもあるでしょう。

シェアハウスの事業をしている関係で日本にいれば数日に一度は不動産屋から電話がかかってきます。「お客様でシェアハウスをお探しの方がいるのですが、当社で扱わせてもらえないでしょうか?」と。所定の仲介手数料は勿論取るというのですが、当社はネットで集客をしているので所定の手数料を払う理由がたたないと言うと「では、紹介料という名目でお安くするという事で」と変わってきます。そこで私が一言「ところで御社は業法や登記上も含め、シェアハウスを扱えるようになっていますか?」と聞くと100%失礼しました、と切られます。

つまり、不動産屋には明らかにビジネスのフレキシビリティがないのであります。これが私が言う「ワクワクさせないビジネスとその人たち」の理由であります。

不動産の種類は売買、賃貸といったスタイルから明らかに変化しつつあります。例えばシェアオフィスなども今後は面白いコンセプトです。国家戦略特区の一部で外国人向けに旅館業法の規定の緩和が見込まれていますのでそういう需要もあるわけです。では不動産屋はどんどん変わりつつあるビジネスをどうやって取り込み、売買、賃貸以外のオプションとして顧客に紹介できるのでしょうか? 業法の縛りで「多分ない」と思います。

そのもう一つの理由は決められた仲介手数料にこだわり過ぎていることもあるでしょう。「あれやっても手数料少ないから」「これなら両手(売り方と買い方両方から手数料を取ること)」とマネーのことしか頭になくお客の幸せなんてまるで考えていないように思えます。

例えばあるファミリーが住宅を探していたら子供の年齢から学校や生活、安全面を、奥様の過ごしやすい環境、ご主人の通勤などあらゆる角度から相談に乗ってくれるコンサルタントのような人がいたら不動産屋は俄然変わることでしょう。

が、駅前の何軒かある不動産屋のガラスにはべたべたと物件案内。その奥にはしかめっ面したオヤジがだみ声で電話していたらやっぱり、この業界は当分変わらないな、と思ったりします。私が不動産の「不労所得」で仕事が暇だったら新たなる不動産屋のスタイルなどを考えてみたいと思いたくなります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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