グローバル中間層に日本の根本的長所を売り込む方法

2014年12月29日 05:30

(この記事は、先日の衆院選直後に、この結果に「不満」な人にも希望が持てる道筋を示そうという意図で書かれたものです。が、あまりに長くてアゴラ編集部の投稿ガイドラインに反してしまい注意を受けたので、分割して再度投稿させていただいております。毎回単体でも読めるように工夫していきます。)

今までの議論をまとめると、日本ではあらゆる改革がなぜ進まないかというと、

・「アメリカレベルに大雑把すぎる改革」によって日本の根本的な強みが崩壊しないようにするために、すべて「抵抗勢力」さんによって抑えこまざるを得なくなる

からこそ、

・「日本の一番の長所」を「グローバル中間層」に対して一貫して売り込める文脈を世界に提示することで、日本でははじめて「内向き」になる必要自体がなくなって「改革」も実現するのだという話

をしました。

今回はその売り込み方に対する具体的な話に入って行きます。前回の記事以降、初掲載時に最も評価が高かったくだりにさしかかっておりますので、ぜひ前回からあわせてお読みいただければと思います。


「グローバル中間層のスノビズム」を捉えていくためには、中国や韓国メーカーの「ガッツと熱意と度胸」的な営業力だけではダメで、「文明史レベルでの大きな文脈」をとらえた「一般論じゃない個別解」としての一貫した戦略が必要になります。

例えばこんな感じで。(以下画像三枚クリックで拡大します)
141211_戦略-01

141209_戦略-02

141211_戦略-03

こういうのは、「現場の力は凄いあるけど全体的連携は皆無」的な(多くの)日本の会社の文化で生きておられる方にとっては新鮮さがあるチャートだと思います。

このチャートはもともとはある特定の会社のある特定の商品について作ったものを改造して一般化したものなので、たとえば「入口商品」ってどういうものなのか・・・というような細部がわかりにくいかもしれませんが、その辺は想像力で補っていただきながらちゃんと読んでもらえると、色んな産業の色んな商品に応用できるはずです。(場合によっては”入り口商品”でなく”勝てるタイプの顧客”にフォーカスすることが鍵の業界もあると思います)

もしあなたの会社で応用できそう!と思ったら、この画像をダウンロードして、著作権フリーで使ってくれて構いません。印刷したりタブレットで表示したりして、ぜひお仲間との議論の土台にしていただきたい。(元データでないと細部が読めないと思うので、それぞれクリックして別窓で開いてから保存してください)

こういうフレームワークを元に、特に3枚目の各階段ごとの、「施策ABC」と書いた所などが自分の会社の場合どういうものにあたるだろうか?とあなたの会社で公式あるいは非公式に議論されると、「そういやこの前出てたアイデアはここにあてはまるのか」的に整理されるはずです。

「Aが大事だ派」と「Cが大事だ派」がお互いが敵だと思ってケンカしてたんだけど、実は同じ一連の戦略の2つの「部分」を主張してただけだったよね・・・ってなったりすることもある。(入り口商品になりそうな”アイデア重視”派と、”フラッグシップ機”的なものが好きな人はキャラ的に不倶戴天の敵になりがちなんですが、”もうそういう時代じゃないぜ”vs”うっせー黙ってろ”的な対立を超えて、一貫した戦略でやれば”両輪”になるんだ・・・と思えるといいですね)

体験的にいうと、こういうフレームワークが出せた場合、それぞれの「箱」に入れるべきアイデアは今から新しく考え出すまでもなくすでにその会社内で「何度も提案」されていたりすることが多いです。ただ単発のアイデアではうまく社内で合意形成できなかったり、実行してもコワゴワものすごい低予算しか出さなくて失敗した残骸のようなプロジェクトがホソボソと惰性で続いていたり(一度始めたら今度は辞めない 笑)するんだけど、「こういう全体像のこの部分ですよね!」という合意で「点と点を繋いで線にしていく」とうまく行く可能性が一気に高くなる。

こういうのは、わざとらしく「囲い込むぞ!」って思ってもあんまりうまく行かないことも多いんですが、今の時代それほど消費者側から見て「囲い込まれ感」があるものじゃなくてもスマートに自然に「keep in touch」状態にできるIT的なしくみって沢山ありますからね。そのへん、「線にしていくぞ」という思いと、「中心にある本当の価値」に対する自信さえちゃんと裏付けされた確実なものとして持っていれば、だんだん自然と繋がってくるはずです。

日本の会社は現場が賢い分、末端の末端までゴリゴリと欧米的トップダウンでやろうとしても、「箸の上げ下ろしまで口出されてやってられっか!」みたいなギクシャク感が生まれるんですよね。でもこの調度良い”中間的な抽象度”の「フレームワークレベルのこと」を共有して、「この全体像の流れの中の施策ABCについて全力をあげよう」という 「全体像の意志共有」さえできれば、あとは優秀な現場の人たちが「まだ何も言ってないのに!」というレベルで先に先に意志を具現化してくれてうまく行くことがあります。

最近、日本型ROE重視経営だとか、コーポレート・ガバナンス改革だとかの掛け声が盛んですけど、「本来やったら凄い良いのに合意形成が全然だから困ってたんだよね」という問題について、こういう「フレームワークレベルの合理性の共有」が進むのであれば、むしろ日本経済の起死回生の一歩になるでしょう。

しかし、そういう「下からの合理性を上から権威付ける」形にならずに、ただ「上からの論理を押し付ける中身のない議論」ばかり暴走するようになると、ただなんのビジョンもない自社株買いが横行したりするだけに終わります。金融技術による官製相場のお化粧がハゲた時には日本は本当にシャレにならない酷い状況に陥ることになるでしょう。

もちろん、個別の改革の現場レベルでは常にある程度は「断固とした意志を示す」ことも必要ではありつつ、その「環境」を整備していくためのマクロな文脈として見た時においては、「反発する人たち」を「時代遅れの抵抗勢力」扱いしないことが大事なんですよね。「反発があるということは、”本質的な合理性”からはまだ遠い上滑った論理しか通せてないからなんだ」というような発想にしていかないと。

この問題への解決が「必殺技」的な定型化したパターンに定着できれば、凋落する日本ブランドの大きなムーブメントとしての復権につながる可能性があるんですが、具体化レベルになると私の所のように経済思想家業と二足のわらじで一人でやってるコンサル会社にはビッグイシューすぎるので、各界の賢人の皆さんで協力しあって実現していってほしいなあと切に思ってるんですよ。

そのためには、ネット小売直販やバイラルメディアやSNSマーケティング的なのに強かったり、それぞれの進出先の国に根を張ってビジネスをしていたりというような「現場叩き上げ」的なプレイヤーも、グローバル経済的な論理をシッカリ共有していこうとするプレイヤー(ファンド・外資コンサルファームその他、狭義の”グローバル”な文脈で動いている働き手)も、電通博報堂的な意味での「クリエイティブ」さんたちも、そして、「それら一連の”意識高い系”とある程度隔絶していて、時代の下らない流行に惑わされない日本人の集団的安定感の存在」も、全部等しく必要なんですよね。

で、それぞれの「文化」が他の「文化」を押しつぶしてしまってそのイビツさにあとから復讐されてしまわない形で、日本全体としての「最適な連携」を生み出していくには、ある種の「市場主義」を旗印として動かしていくしかないんですよ。

おそらく、それぞれの「文化」を代表する「伝統的な会社」そのものではなくて、その良さを身につけつつも後に独立して個人でやってる身軽なプレイヤーたちが、ワンテーマごとに「7人の侍」とか「オーシャンズ11・12・13」みたいにうまくチームとして集って「日本の伝統的な大会社」と自由に連携して動けるようになると、日本は一気にスムーズな「全体的戦略」を通せるようになると私は考えています。(そういう連携が生まれてくれば、”個人プレイヤー”が、日本の強みである”集団プレイヤー側”の人間を憎悪してその強みごと解体しようとしがちな幸薄い現状を超えて、お互いの良さを出しあえればいいよねという当たり前のコンセンサスを持てるようにもなるでしょう)

でもどんだけ「みんなのための全体最適的な良いこと」を考えているチームができても、日本の縦割りな大会社の連携の弱さ・・・というのは全く「戦前日本の失敗と全く同じ問題そのもの」的な状態にあるので、そこに「横串を通していく大義名分としての市場主義」っていうのがものすごく重要になってくるんですよね。

そういう「上からの論理と下からの論理をちゃんと引き受けるロジックのありよう」を、日本のビジネスマン間の暗黙知として分厚く共有できるようになってくれば、あとはコーポレート・ガバナンス的な市場メカニズムによる統治によって、「みんなのための良識」が通るようになるし、それにあえて「抵抗」する意味も価値も正当性もないからみんな受け入れようぜ・・・という流れにもなるでしょう。

少し長くなってきたので、この話は次回もう一度まとめます。

今後も不定期に更新していく予定ですが、連載形式だと半月ぐらいかかるので、一気読みされたい方は、私のブログ↓でどうぞ。
http://keizokuramoto.blogspot.jp/2014/12/blog-post_14.html

倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
・公式ウェブサイト→http://www.how-to-beat-the-usa.com/
・ツイッター→@keizokuramoto
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