沖縄県知事は「ゆすりの名人」なの?

池田 信夫

4年ぐらい前に、アメリカの国務省の日本部長だったケビン・メアさんが「沖縄県人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ」と発言したと共同通信が報道して、メアさんが国務省をやめた事件がありました。彼は「そんなことは言ってない」といっていますが、これはまちがいともいえないようです。


沖縄県の翁長知事は、26日に上京して沖縄担当大臣とあい、「沖縄振興への協力を要請」しましたが、来年度の予算は減額される見通しです。彼は首相と官房長官にもあいたいといったのですが、あえませんでした。

この原因は、翁長さんが知事選挙で「米軍の普天間基地の辺野古への移転反対」をかかげて当選したからです。それまで知事だった仲井真さんは去年の暮れに辺野古移転を認める見返りに、8年間で2兆4000億円(県民ひとり170万円)という有史以来の沖縄振興予算を勝ち取りました。

この金額の算定根拠ははっきりせず、使い道も決まっていません。これは地元が自由に使える「つかみ金」で、いわば政府が辺野古移転を2.4兆円で買ったわけです。これがメアさんのいう「ゆすり」ですが、日本語ではたかりといったほうがいいでしょう。

実は、沖縄県には辺野古移転を拒否する権利はありません。日米地位協定で、米軍は日本のどこにでも基地をつくれるので、日本政府も沖縄県もそれを断れないのです。だから2.4兆円には何の意味もないのですが、基地問題を解決する価値がそれ以上あるとすれば、必ずしも悪くありません。

問題は、お金をもらった沖縄県が「やっぱり辺野古移転はいやだ」といいだしたことです。これはたかりより悪い嘘つきです。翁長さんは選挙で仲井真さんを破ったのですが、辺野古移転を認めたのは沖縄県であって仲井真さん個人ではないので、知事が代わっても約束を破ることはできません。

沖縄タイムスは「自治壊す恫喝許さない」という社説をかかげて、また「沖縄の心」を持ち出しています。

沖縄戦による甚大な被害と27年の米軍統治という苦難の歴史をたどった県民への「特段の措置」が出発点である。本土から遠く離れ、多数の離島で構成される事情にも配慮し、各分野で生じた格差の是正、自立的発展に向けた基礎条件の整備が目標だった。

基地を人質にして、本土から金をせびり取ることが「自立的発展」につながるんでしょうか。沖縄の自立をじゃましているのは、こういうふうにいつまでも戦争の古い話を持ち出して本土にたかる人々と、それに甘える県民です。本土のマスコミも「沖縄に寄り添う」などといって、彼らを甘やかしてきました。

こういうただ乗りは、財政の豊かなときは多少はゆるされましたが、これからは無理です。沖縄県が辺野古移転を拒否するのは自由ですが、振興予算はゼロです。お金をもらう約束をした人が、その約束をやぶったらお金はもらえない。よい子のみなさんでもわかる、簡単な理屈ですね。