12月24日付のJBプレスで、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、慰安婦問題について驚くべき記事を書いている。
題して「米国政府の結論は出ている/慰安婦『強制連行』の証拠はなかった/日本糾弾勢力がひた隠す不都合な真実」。
「日本軍が女性20万人を組織的に強制連行し、性的奴隷にした」という慰安婦問題に関する日本への糾弾が歴史的な冤罪であることを証明する有力な資料が、米国政府内に存在するという。
「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)のアメリカ議会あて最終報告」がそれで、2007年4月に公表された。米国政府によるドイツと日本の戦争犯罪に関する大規模な調査結果である。
米国政府の各関連省庁や軍部が7年がかりで大規模な調査したもので、狙いは「日本軍の慰安婦に関する戦争犯罪や女性の組織的な奴隷化に関連する文書」の発掘にあった。だが、それを裏づける政府や軍の文書は1つも発見されなかったことが明らかになったのだ。
米国や国連で「日本軍は組織的に女性たちを強制連行した」と主張する側にとっては、まさに「不都合な真実」。冤罪を晴らしたい日本側としては、極めて有力な資料なのである。古森氏は書いている。
<これほど明確な証拠もないだろう。米国の慰安婦問題糾弾勢力がこの証拠の存在について沈黙を保つはずである。むしろこの公開の資料にあえて言及せず、その存在を隠してきた気配さえある>
その通りだろう。ただ、私はもう1つ、もっと重要な問題点を指摘しておきたい。それは、こんな有力な政府文書が公表されたのに、なぜ米下院で、慰安婦問題についての対日非難決議が可決されたのか、ということだ。
民主党のマイク・ホンダ議員らが米下院に慰安婦問題での対日非難決議案を提出したのは2007年1月で、下院外交委員会で同案が可決されたのは同年6月だ。
一方、先のIWGの報告書の公表は決議前の同年4月である。報告書を読めば、証拠がないのに日本を慰安婦強制連行で非難することはできないはずだ。
ということは、反日勢力の議員ばかりでなく、中立的な議員や親日的な議員もこの報告書の存在を知らなかったということだろう。報告書を書いた人々は積極的にこの報告書の内容を議員やマスコミで知らせてこなかった可能性も大きい。
調査は日本の戦争犯罪に関する14万ページもの米側公式記録を7年がかりでしらみつぶしに調べる大掛かりなものだったという。だが、14万ページの中に、慰安婦問題に関する犯罪性や強制性に触れた資料は1点もなかった。
それなら、きちんと発表するのがスジだと思うが、調査を担当した米幹部は日本の性奴隷の証拠を探すのが目的だったので、結果に「失望」したと表明しており、発表には消極的だった様子がうかがえる。
ともあれ日本側にとっては貴重な資料が明らかになったのだから、外務省はじめ日本政府は、これをテコに米下院の決議撤回や日本に濡れ衣を着せた国連の報告の撤回を強く求めるべきである。
古森氏は「日本の政府も民間も、自国と自国民への冤罪を晴らすために、今後はIWG報告を大きな武器として対外発信を積極的に開始すべきだろう」と強調している。全面的に賛成である。古森氏に対してもこれまでの取材、執筆努力に敬意を表するとともに、今後のさらなる努力を期待したい。
編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2014年12月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。