米1月CPIは08年12月以来で最低も、コアは落ち着きを取り戻す --- 安田 佐和子

アゴラ

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米1月消費者物価指数(CPI)は前月比0.7%の低下となり、市場予想の0.6%より下げ幅を広げた。前月の0.3%の低下(0.4%の低下から上方修正)より一段と減速し、リーマン・ショックの衝撃が冷めやらぬ2008年12月以来の低水準を示現。エネルギーが9.7%と前月の4.7%を含め7ヵ月連続で低下し、引き続き全体を押し下げた。特に、ガソリン価格が18.7%も沈んでいる。エネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン平均価格は1月26日時点で2.173ドルと2009年4月以来の水準まで下落していた。そのほか、食品・飲料も0.1%の低下と7ヵ月ぶりに下振れした。


CPIコアは前月比0.2%となり、市場予想および前月の0.1%を上回った。3ヵ月ぶりの伸びとなる。シェアの大きい帰属家賃は6ヵ月連続で0.2%上昇。住宅も前月まで4ヵ月連続で0.2%を経て、今回は0.1%へ鈍化した。家賃は0.3%と5ヵ月連続で上昇。サービスは0.2%と、堅調な上昇トレンドを保つ。ホリデー商戦の値引きが一服し、服飾は4ヵ月ぶりに上昇に転じ0.3%だった。娯楽も0.2%の上昇と、前月の横ばいから上向いている。教育はパソコンこそ低下基調を遂げつつ、0.2%の上昇を示し前月の横ばいから好転した。一方で、医療費は横ばい。ガソリン価格や航空運賃の下落を受けて輸送は5.0%低下した。中古車やトラックは0.1%と低下を続けた。

CPIの前年比では、0.1%低下し前月の市場予想と一致した。前月の0.8%以下となり、2009年10月以来初めてマイナスに落ち込んだ。CPIコアの前年比は市場予想および前月と同じく1.6%となり、11ヵ月ぶりの低水準に並ぶ。

前年比のCPI、コアとヘッドラインでスプレッドが拡大中。
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(出所:BLS)

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、今回の結果を踏まえ「コアCPIが上向いたほか、コアサービスも0.3%と足元のレンジ上限に達した」と指摘。2014年11月および同年12月の弱含みは原油安が広範に及ぶCPIに波及していない可能性を点灯させるため、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者を安堵させる内容と評価している。

——ドル高を跳ねのけコアCPIが上昇を示したため、議会証言で「短期的にインフレは低下するが労働市場の改善やエネルギー価格など一時要因が減退し中期的に目標値の2%へ近づく」と述べたイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長はホッとひと息といったところでしょう。セントルイス連銀のブラード総裁(今年の投票権なし)は本日、CNBCに出演し「3月に”忍耐強くなれる(patient)”の文言を削除し夏頃の利上げに備えるべき」と発言。ディスインフレ警戒が後退したこともあり、Fedが文言を外し本格的に利上げを地ならしする余地が出てきました。

もうひとつ、明るい材料が出ていました。米住宅金融公社(FHFA)が発表した米12月住宅価格指数は前月比0.8%の上昇となり、市場予想の0.5%から加速していたのです。前月の0.7%(0.8%から下方修正)に続き、2ヵ月連続で強い伸びを遂げました。前年比では2013年5月につけたピークの8.6%から鈍化トレンドを維持したとはいえ、今回5.4%上昇し足元の4%台を上回っています。S&P/ケースシラーに続き好結果となり、中古住宅の在庫縮小も価格上昇を後押ししたのでしょう。 10-12月期では前期比1.35%上昇と、3期ぶりの高水準。前年比は4.91%と足元で最も低い伸びにとどまった7-9月期の4.72%を超え、鈍化トレンドを一服させていました。

(カバー写真:Joanna Poe/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年2月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。