似非ヘッジファンドだからこその分散

森本 紀行

ヘッジファンドは、その本来の定義において、市場リスクがヘッジされたものである。しかし、現実には、市場価格変動をヘッジできている本物のヘッジファンドは、少なかろう。故に、多くのヘッジファンドは、市場の影響を受けざるを得ず、故に、多数のヘッジファンドへの分散も必要になるのである。


現実は、こうだが、理屈上は、少しおかしい。ヘッジファンドの定義を緩くして、広範囲のファンドを投資対象にするので、分散が必要となる、というくらいなら、少数の本物のヘッジファンドを厳選して投資してこそ、ヘッジファンド投資の本来の目的が実現できるというほうが、まともであろう。

理屈は、そうだが、現実は、難しい。第一に、そのような一流のファンドを厳選できるのか、第二に、厳選できたとしても、実際に投資できるのか、第三に、投資できるとして、大きな金額を投資できるのか。

もともと、ヘッジファンドは、プロの富裕層投資家を対象とした小さな領域だったのだ。小さかったからこそ、市場価格変動をヘッジして市場の非効率から収益を生むような厳格な戦略が機能したのである。需要がいかに大きくなっても、供給には限界がある。限界を超えて需要が拡大すれば、ヘッジファンドの定義が緩くなって、似非ヘッジファンドが氾濫してくる。

原点に立ち返って考えると、そもそも、なぜ、ヘッジファンドに対する投資需要が大きいのか。需要が大きくなれば、供給側も対応して、ファンド数が激増する。その多くは、似非ヘッジファンドであり、故に、多数のファンドに分散しないと危ない。そういう構造が問題なのである。

では、純粋な、正統派の本物のヘッジファンドに、どのように投資したらいいのか。物理的な問題だけをいえば、供給に限界のあるファンドばかりだか、既存の投資家以外の新しい投資家の資金を受け付けないものが多いと思われるので、そもそも投資しようがない。

故に、優秀な運用者が新しく立ち上げたファンドに投資するほかない。既存の優秀なファンドについては、過去実績を見ることができるが、新しいファンドでは、運用者の思想と人物と履歴書を信じるしかない。故に、骨董目利き的な能力を養わないと、上手に選択できない。真のヘッジファンド投資というのは、そういうものである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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