日本人はなぜ消費税が嫌いなのか?

2015年03月04日 10:24

今年に入って日本経済が少し息を吹き返してきた気がするのは私だけではないでしょう。株価も高く、企業業績も良好ですが、それらは昨日、今日に始まった話ではなく、今までの積み重ねの結果が数字として表れているだけです。にもかかわらず、比較的前向きな雰囲気があるのはなぜだろうと考えた時、ふとたどり着いたのが消費税引き上げを昨年末に1年半、先送りしたからではないか、という気がしてきました。


消費税だけはその話が出るたびに国を挙げての大きな議論となります。賛同する人は税収不足解消という事実と世の中の税体系において消費税が最も平等な課税方法の一つであるという世界的実証結果を論拠に押し込みます。一方、反対派は消費税引き上げによる消費活動への影響、つまり、メンタルな部分からその説明根拠を進めているところに大きな違いがある気がします。

ところがこのメンタルの影響というのは思った以上に大きく、政府がそれでも消費税を導入、引き上げすれば必ず想定以上の反動がでるというのが過去3回の結果でありました。

ではなぜ、日本は諸外国にように消費税を導入できないのか、私は歴史と思想背景が少なからずとも影響しているのではないかと疑問を呈してみました。

民と国家の関係を考えると現代社会においては国家の許可する経済活動を通じて民は労働し、所得を得て税を払い、消費をします。この所得税は欧米においては税の一つであり、国家がその税収でカバーできない場合は他の代替手段を用いて税収を得ることを当然のプロセスとして取り込みます。言い換えれば国家も税収を通じた一つの経済活動を行っており、国家という課税主体があたかも民の一人であるがごとく立ち振る舞っているのであります。

例えば私の住むバンクーバーにおいて近く公共交通機関を運営する半官半民会社の赤字補てんのため、新たなる消費税0.5%を創設するか住民投票が行われます。私がこれを初めて耳にした時、聞き間違えだろうと思ったぐらい珍妙な案であります。日本で言えばさしずめ、JRが赤字なのでそのJRを利用する住民に赤字補てんの消費税を導入しましょう、というようなものであります。これが可決されるかどうかは微妙なのですが、少なくともこれがまっとうに議論されるのが外国なのです。ちなみに全く同じ理由で当地の駐車場料金にはその会社の赤字補てんの為、21%もの税率で別枠課税されているのですが、導入に際してほとんど話題にもならず、払っている住民も知らない人がいまだ多いのが実態です。

日本では税とは何か、と考えると私は律令制の在り方が根本にある気がしております。先ず、律令制の意味を確認しましょう。以下はネット辞書で出てくる律令制の意味です。

「律令を基本法とする古代日本の中央集権的政治制度およびそれに基づく政治体制。中国の隋・唐の法体系を取り入れて成立。二官八省を中心とする中央官制、国郡里制による地方行政組織が整い、公地・公民を原則として官僚による土地・人民支配が確立した。人民を良民・賤民(せんみん)に二大別し、班田収授の法により耕地を与える代わりに租庸調(そようちょう)・雑徭(ぞうよう)などを課して中央および地方の財源とした。荘園制が発達する9世紀末から10世紀ごろには実質が失われた。令制。」

現代社会において税体系はもちろん変わっているのですが、日本を含む東アジアにはこの律令の考え方が今でも残っていないでしょうか?公地公民により土地も民も国家が支配するという発想がないかといえば中国や北朝鮮は土地の私有制はありません。韓国の財閥はさしずめ豪族でしょうか?日本の場合は土地は私有でありますが、高い相続税により3代で普通の人になるとも言われるその起源は723年の三世一身法で、律令政治下において孫まで三代の私有を認めた画期的な法律があります。(その後、墾田永遠私財法に発展します。)

つまり、日本に於いても国家と民の関係とは土地の私有、公有にかかわらず、労働の対価を国家に治めるという中央集権体制の思想が今でも残っているのであり、欧米のような国家と民が平等な位置関係にないのではないかと提起できそうです。例えば日本の農地は神々から授かった土地であり、原則そこに家を建てたり自由な経済活動ができないようになっています。TPPにおいて日本のコメは譲らないとする理由は正に脈々と続く歴史の中でコメ=お金=律令の基本という事につながる気がします。

では消費税はなぜだめなのか、といえば発想的に二重課税の思想がある気がします。中央が決めた所得税、法人税で既に納めるものは納めているのだからその上更に課税するのは「国民一揆」に値するという事ではないでしょうか?今年から課税強化された相続税はその主体が不動産とされています。つまり、三世一身法ではありませんが、相続税はいくら課税しても国民としては文句を言えないという事になるのです。だから数十年に一度のマグネチュードと言われる今回の4割もの基準引き上げもほとんど誰も文句言うことなくすんなり実施されたのであります。

江戸幕府は士農工商という身分制度の中で士に一定の重みをもたせていました。明治以降も国民と政府には明白なる線が引かれています。幸いにして世界で最も進化した社会主義社会とも言われる日本になったのは国家が平等社会を築き上げたからであり、逆に消費税はその平等さを踏みにじるものであると国民が「解釈」すればその導入は明らかに一揆のごとく、反発されるのではないか、というのがこの頃、ふと思いつく消費税嫌い日本の可能性の一つではないかと思ってしまいます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本 見られる日本人 3月4日付より

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