将来起こり得る世界のビックイベント

北尾 吉孝

本ブログでは以下、将来起こり得る世界的に見て大きな出来事と私が考えるもの2点につき、簡単にコメントして行きたいと思います。


先ず一つ目は昨今様々な媒体で取り上げられていたように、現在世界の宗教人口で最大勢力のキリスト教徒が2100年にはイスラム教徒に抜かれると予測されていることです。

より短いスパンで細かく見れば、今後「40年間のイスラム教徒の増加率は73%で、キリスト教徒やヒンズー教徒の増加率の2倍以上に達」し、その40年後「イスラム教徒は27億6千万人(29.7%)となり、キリスト教徒の29億2千万人(31.4%)に人数と比率で急接近する」とされています。

昨年6月末より国家樹立宣言をし世界にその勢力拡大を図る「イスラム国」(スンニ派過激派組織)の各種動向、そしてまた、アフガニスタン・イラン・イラクあるいはシリア・イエメン等々と此のイスラミックの国々で起こっている現況を考えるに、人類史上初と称される上記趨勢は注視されて行くべき見通しです。

そういう意味では例えば、国際「政治学者イアン・ブレマー氏が率いるコンサルティング会社のユーラシア・グループ」が公表した「2015年世界の10大リスク」の中にも次の3点、「(5)イスラム国の拡大リスク」「(8)中東におけるイスラム教スンニ派とシーア派の対立の深化とサウジアラビアとイランの緊張リスク」「(10)トルコ・エルドアン大統領の強権的な政治手法がもたらすリスク」とありましたが、短期的・中期的・長期的に此のイスラムの行方が如何なるリパーカッションを世界に起こして行くのか、非常に不安に駆られる部分があります。

それからもう一つのビックイベントに、中国の元の基軸通貨化が挙げられましょう。中国は既にBRICS開発銀行や上海協力機構開発銀行の設立、日米が創設メンバーとしての参加見送り方針を明らかにしたアジアインフラ投資銀行(AIIB)等々で以て主導的な役割を果たし、究極的には基軸通貨として元の地位を確立しようとしているのだと思います。

昨日も人民元がIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)構成通貨に年内に採用される可能性があるというニュースがありましたが、中国は此のIMFや世界銀行(投票権シェア:3.8%)といった国際金融機関での影響力を確固たるものとし既存の国際金融秩序を揺さぶって行く中で、少なくとも世界経済の覇者となる頃には元を基軸通貨としてグローバルに認めさせたいのだろうと私は考えています。

歴史を振り返ってみるに今から71年前、1944年に開催されたブレトンウッズでの会議にあって、英国の国益を代表したのがかの有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズ、片や米国の国益を代表したのがハリー・ホワイトでありました。

嘗てのブログ『国際通貨体制史におけるドル基準通貨体制』(09年8月17日)でも述べたように、此の両者は夫々の国益を実現すべく議論を展開するわけですが、その中でケインズは最早スターリング・ポンドが世界の基軸通貨であることは不可能であるとの認識の下、次善の策として如何にすべきかという対応に終始して交渉を進めました。

彼はその次善の策として、二度の世界大戦により財政が破綻する中で失った基軸通貨の発行権という最高の国益を米国に単に渡してしまうのでなく、「バンコール」という人工的な世界通貨を創出する「世界中央銀行」を創設し、そこで英国が指導的な役割を果たすことを考えていました。

「世界中央銀行」と「バンコール」の提唱は、ある意味将来をも予測したものであったと私自身は思っていますが、このような将来を見据えつつ英国の国益を最大限実現して行こうとする彼の構想はホワイトの強行路線により潰え、結局は米国のドルが世界の基軸通貨となったのであります。

此の現代にあっても近い将来、国際通貨システムをどのように変革して行くかを議論すべく、何れ上記ブレトンウッズで行われたような会議を開催せねばならないタイミングが再来するのではないかと思われ、その時世界における経済的支配者が此の基軸通貨を決する権利を有するのだろうと思います。

勿論、最早一国の通貨を基軸とする国際通貨体制を今後も敷いて行くのは不可能ではないかと考えており、世界の主要通貨を加重平均で算出した上記SDRのようなバスケット型世界通貨の創出という形に落ち着く可能性も少なからずあると思っています。

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