アルバイトが「時給1500円」になれば日本は復活する

2015年04月16日 18:31
ファーストフードの話題

アゴラにも自身の記事を転載されている、中嶋さんが書かれた記事が非常に人気になっています(マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。 (中嶋よしふみ SCOL編集長))。いつも面白く示唆に富む記事を書いていらっしゃるので勉強になりますが、少し違う考え方をしてみたいと思います。

もしファーストフードを始めとして、パート・アルバイトなどの非正規社員の時給が1500円になれば、復活する可能性もあるかもしれないという視点です。


まず大前提として

  • お金はどこかから湧き出てくるものではない
  • 給与の総額は決まっている

ということを理解する必要があります。

中嶋さんもおっしゃっていますが、企業は売上を稼いで初めて給与が支払えるという前提があります。売上が減れば給与も減るし、売上が上がれば給与も上がります。そして売上が上がったとしても、給与の上限は存在します。年間1億円の売上しかない企業が1000万円の人材を10人雇えば、事務所費や広告費で赤字になるので一定以上の給与は払えないのです。

この前提から考えて、もし時給が1500円になれば、人件費がアップします。人件費が上がればそのお金をどこか別の場所から持ってこないといけません。たとえマクドナルドがアルバイトの時給を1500円に上げたとしても、売上も比例して上がるわけではありません。となるとどうするか?中嶋さんの言うように解雇が必要になる可能性はありますが、他の方法もあります。それは正社員の報酬を減らすのです

日本全体で見ると正社員への給与総額は145兆円くらいであり、非正規社員への給与報酬は17兆円ほどになっています。仮に正社員への給与総額145兆円の1割をカットし、非正規社員への給与報酬に回せば、およそ31兆円ほどになります、1.8倍ほどになります。時給900円の場合1.5倍で時給1500円になりますから、正社員の給与カットで対応は可能です。

もちろんこれは全企業を合わせた場合の話であり、各個別企業では非正規社員ばかりなので難しい企業も多いでしょう。ファーストフードは典型例です。マクドナルドはクルーが10万人はいますので、平均して50時間働くとし、1500円に必要な給与アップ額を700円と仮定すると、月に35億円の資金が必要になります。正社員の給与カットをするとしても仮に1万人正社員がいても、一人あたり月額35万円の給与カットが必要になりますから非現実的であり、不可能です。

であれば次に考えられるのは正社員の非正規社員化です。非正規社員のみ、正社員はゼロにして対応すればなんとかなるかもしれません。それでも時給1500円の確保はマクドナルドでは難しいでしょう。1万人の正社員平均給与が500万円だとして、非正規社員化した場合はおよそ月に20億円ほど人件費が浮くでしょう。しかしそれをすべて回してもクルー全体が時給1500円にはなりません。およそ15億円足りません。結局中嶋さんが言うように、半数近い解雇や事業縮小が行われると思います。

しかしもし非正規社員全体が時給1500円になれば、日本の雇用環境は一気に変わる可能性があります。正社員は非正規社員の給与を支払うために給与カットされ、非正規社員に契約変更されて流動化が一気に進む可能性もあります。もちろんハローワークの窓口で働いているアルバイトも給与が上がり、公務員の正職員の給与もカットされるし、女性の一般職や派遣社員の給料もアップするでしょう。

その代償として飲食店や小売店のように、非正規社員比率の高い業種では多くの解雇が行われます。正社員はなくなるかもしれません。しかしこのような痛みがあったとしても、正社員と非正規社員の格差縮小が起こり、雇用流動化が促進されるなら私は賛成をしていいかなと思います。「自らの雇用が確保されて、時給だけが上がってハッピー」というようなことをデモ主導者・参加者が考えているのであれば、それはお門違いですが。

私はフリーランスですから、基本的に正社員やパート・アルバイトがどうなろうと他人事でしかありません。だからこそ雇用の痛みがあっても雇用流動化が起こるなら賛成するというろくでもないことが言えるのです。しかしデモ参加者の方々は違います。まさにパート・アルバイトをしている当事者の方々ではないでしょうか。

であれば、時給が1500円に上がるとなった場合、どこからそのお金が生まれるのかを考えたほうがいいかもしれません。時給を上げるには売上を上げるか、誰かの取り分から取るしか方法はないのです。同僚の正社員や解雇されるパート・アルバイトの生き血を吸ってでも自分自身の時給を上げたいのか、今一度自分に問いかけてみるといいかもしれません。

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松本 孝行
株式会社セカンドチャンス 代表取締役

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