マック再生は茨の道か?

岡本 裕明

マクドナルドの2014年12月末決算見通しで最終連結損益が380億円の赤字になると発表しました。昨年が230億円の赤字でしたからずるっと下がり続ける悪い形が形成されています。これを受けて報酬減、基本給引下げ、131店舗閉鎖を含めたリストラ案が提示されました。


これをどう評価するかですが、リストラ案そのものが経営のテクニック的手法に限定され、抜本的な対策が打ち出されていないことから効果は薄いような気がします。マクドナルドの問題は外科手術ではなく、内科の問題ではないでしょうか?

アメリカのマクドナルドも不振ですが、アメリカ人がインタビューで「飽きた」と言うコメントそのものが今の体質の問題点をよく表していると思います。私も70年代、80年代と日本で大変世話になり、90年代はアメリカ、カナダでクルマによる長距離移動の際、ドライブスルーで購入して運転しながら食べるチーズバーガー2個セットに一時期お世話になり続けていました。(大きいハンバーガーは片手で食べられません。)

かつてはビックマックにぞっこんでした。が、チーズバーガーを買っていた時期はハンバーガーそのものは何でもよかったけれどお手軽でメニューで悩まず、すぐゲットできるという便利さが購入理由だったと思います。私の周りのカナダ人でもマックに通っていた人がいますが、彼らはコンサバという発想の中、価格、味、品質で「失敗しない」という理由が主体でした。

しかし、世の中はこの10年ほどで激変し、変化のテンポが速くなりました。新たなライフスタイルが持てはやされ、情報が瞬時に共有できるようになります。そうすると今までコンサバだった人々を揺り動かす地殻変動が起きたといえそうです。ところがマクドナルドの様に世界規模で一定のイメージを作り上げたビジネスはその変化に容易に対応できません。それが正に今の悪化が止まらない事態を示しているのだろうと思います。

ところで北米ではハンバーガーは比較的女性よりも男性向きのフードのイメージがあります。理由はレストランなどのバーガーはとてつもなく巨大でその食べにくさは誰もが知るところです。通常、ナイフで半分に切り、(人によっては四分の一)それを少しずつかじるようにしないと中味は崩れるし、手はソースと肉汁でぐちゃぐちゃになります。女性はどうしてもバーガーではなく、サンドウィッチやラップ、ピザといった食べやすいものを注文しています。そのハンバーガーも英語では広義でサンドウィッチと称します。ならばバンズ系から違うスタイルのサンドウィッチへの転換は一つのアイディアだと思います。

もう一点は特徴だと思います。北米で流行っているバーガーチェーンはかならず「売り」があります。例えば秘伝のソースとか肉へのこだわりなどで圧倒的なファン層を作り上げています。北米では今一つになったKFC(ケンタッキー)も秘伝の製法が生き残る糧となりました。流通と経営手法で大きくなったマクドナルドと大きく違う点だと思います。

よって、日本マクドナルドが再生出来る第一歩はアメリカマクドナルドとの関係を見直し、日本人の胃袋とハートを貫ける斬新さを打ち出さねば難しいと思います。ところがカサノバ社長のみならず、原田会長の後任もアメリカ本社から派遣され、アメリカ主導の色を更に濃くしています。これは私には逆向きにしか思えません。5割の株を所有する日本マクドナルドからの配当金がそんなに欲しいのか、という拝金的経営がありありと出てしまっています。

同社が再生できるかどうか、茨の道だと思います。日本人にとってマクドナルドが無くなっても痛くもかゆくもないという事実を考えるとほぼゼロからのやり直しぐらいの体制にしないと厳しい気がいたします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月17日付より