ヘッジファンド界の巨星が明かす投資アイデアとは? --- 安田 佐和子

2015年05月06日 09:14

sohn

アイラ・W・ソーン・インベストメント・カンファレンスが、今年もニューヨークで開催されました。マーケットを揺るがすヘッジファンドの大物が、それぞれの投資アイデアを語るイベント。20回目を迎えるにふさわしく、5月4日に開催した今年も市場でフォースを見せつける錚々たるメンバーがそろいました。


日本でもその名を轟かす強者が教えてくれるヒントは、以下の通りです。

▽グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン

最初に登壇したのは、りそな銀株取得で知られるアインホーン氏。「マザー・フラッカー(mother fracker)」とお下品な罵り言葉をもじりながら水圧破砕(fracking=フラッキング)依存の石油企業のショートを推奨しています。パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD)をはじめ、フラッキング関連企業の石油生産量と備蓄量は掘削・開発向けに拡大するコストに見合わないと主張。その上で、「キャッシュを使い果たしながらも成長しない企業に価値はない」と切り捨ていました。PXDに加え、ショート銘柄としてコンチョ・リソーシズ(CXO)、コンティネンタル・リソーシズ(CLR)、EOGリソーシズ(EOG)、ホワイティング・ペトロリアム(WLL)などを挙げ、過剰評価(overvalued)されている警告を鳴らします。

▽コーベックスのキース・ミースター

ミースター氏は、サード・ポイントと並びヤム!ブランズ株を大量取得したことが1日に明らかになったばかりとあって、もちろんケンタッキー・フライドチキンやピザ・ハットの親会社に焦点を置きます。同氏は、「中国部門のスピンオフ(分離・独立)」を提案。中国規制当局が取り締まりを強化するなか「1997~2012年まで快進撃だったヤム!ブランズ株は、2012年以降にレンジ内にとどまっている」と疑問を投げかけました。その上で、ヤム!ブランズは中国での事業をフランチャイズ化し、米国内でコーポレート・ガバナンスに注力すべきと主張しています。

▽オメガ・アドバイザーズのレオン・クーパーマン

マーケットのヨーダならぬ長老たるクーパーマン氏は、世界での金融緩和ラッシュを背景に低金利時代を迎え、債券相場に慎重な見解を寄せます。保有債券の年限を短期化し、債券のポジションを縮小すべきと主張。10年債利回りは名目GDPの水準で推移するケースが多いため、同利回りが1.9%から5%へ上昇した場合は12%の損失を被ることになると警告。低金利の欧州債にも、近寄るべからずと注意を促していました。

▽グレンビュー・キャピタルのラリー・ロビンス

今年2月、低迷するマクドナルドに比較的小さなロング・ポジションを取り株価押し上げを提案したロビンス氏。自身を物言う投資家(activist)ではなく提案する投資家(suggestivist)と自称する同氏は、開口一番「この日のためにヘッジ・クリッパーを使って髪を切って来たんだ」というこの日一番のジョークで会場を沸かせました。ヘッジ・クリッパーズとは、3月後半頃から盛んになった”ウォール街を占拠せよ!”のヘッジファンド版抗議活動を意味します。彼のオススメ銘柄は、アブビー。経営が規律正しく研究・開発費を削減する必要がない上に割安で、主力の生物学的製剤”ヒュミラ”の特許切れを迎えても数年先に高いリターンをもたらすと予想します。買収対象の可能性にも触れ、株価が2倍に膨れ上がる可能性にも言及しました。

2014年のそれぞれの推奨戦略・銘柄は以下の通り。勝者はラリー・ロビンズ氏、ザック・シュライバー氏、敗者はジェフリー・ガンドラック氏、ビル・アックマン氏。
marketwatch
(出所:Marketwatch/Factset)

▽ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック

新債券王と誉れの高いガンドラック氏は、米債利回りは底を打ったとの見解を表明しました。2012年7月のボトムにたどり着くことはない、と予想しています。引き続き、高利回り債には弱気スタンス。Fedが利上げするタイミングでハイイールド債を売却して米国債を取得する戦略こそ、常にリターンを得られると言います。ただし2020~2021年までは心配無用とし、米国の財政赤字が改革なしで悪化する約5年後に嵐が訪れるとのシナリオを描いていました。一方で、高利回りのプエルトリコ地方債にはロング戦略で攻めているもよう。ガンドラック氏は「最近取得し始めたばかり」と明かし、「特に一般財源保証債よりデフォルトが見込まれる年金向け財源保証債がおススメ」と語っていました。

▽アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー

2013年に年収35億ドル(約4200億円)という金字塔を打ち立てたテッパー氏は、債券スプレッドと株式リスク・プレミアムを挙げ「S&P500は割安な半面、BBB格付けの債券(投資格付け級として下から2番目)は全くそうではない」と述べ米株に強気、債券に弱気スタンスを示しています。2014年11月にロビン・フッド財団のカンファレンスで明かしたユーロ・ショート戦略は、「高いリターンを得る機会になっただろう」とコメント。その他、米国だけではなく欧州連合(EU)、日本、中国など4つの国・地域で何らかの緩和策が打たれているなかで、”お上に逆らうな”とのメッセージを送っています。中国については、金融市場が米国と同じような反応を示すとは限らないと呼びかけ。すでに中国は大量の債券を発行済みでQEは一段の政府債務拡大を意味し、米国が謳歌したような株高は望めないとの考えを示しました。

▽ユーラシア・グループのイアン・ブレマー

政治リスク専門コンサルティングの先駆者であるブレマー氏は、中国の台頭こそ地政学的リスクと指摘します。中国が足元で織り成す戦略は世界第2次世界大戦後に米国が打ち出したマーシャル・プランそのものであり、第2の冷戦の幕開けではないと説明。今後はカンボジアをはじめラオス、ロシアが中国側につくと予想しており、仮に韓国、オーストラリア、ドイツがヘッジを掛ける意味でも米国から中国に寝返れば「大局的な流れを変える」と述べていました。

▽パーシング・スクエアのビル・アックマン

バリアントと組んでアラガン買収を仕掛けウォール街の黄金ルールで勝利を収めたアックマン氏は、カンファレンス出席前にCNBCで引き続き”ねずみ講”としてハーバライフに非難の矛先を向けます。ショート戦略に「100%自信がある」と語りつつ、一部で期待されていたCSXについては言及しませんでした。カンファレンスではレストラン・チェ—ン大手ジャーデンとノマド・ホールディングスを比較し、両社における評価の違い分からない」と疑問を投げかけていました。ノマドは投資会社で、4月20日に欧州の冷凍食品会社イグロ・ホールディングスを28億ドルで買収を発表した後に株価は80%も急伸。プライベート・エクィティ(PE)が初めて参入する市場の手掛かりとして買収する企業=プラットフォーム会社を、「投資家はよく理解していない」とも述べていました。その他、バリアントをめぐっては「バークシャー・ハザウェイへ成長する初期段階にある」との展望を描いています。

なおアイラ・W・ソーン・インベストメント・カンファレンスは、ガンで死亡したウォールストリートのトレーダー、アイラ・W・ソーン氏を悼む友人と同僚により1996年に始動。以後、ウォール街でのカンファレンスとして定着し、業界の第一人者が投資アイデアを披露する場として発展を続けております。

(カバー写真:Bloomberg)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年5月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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