「大阪都」を歩くで(その1) --- 山城 良雄

2015年05月11日 10:34

はじめにハッキリ言うておく。

ワシな、(いわゆる)大阪都構想(注1)に関して、今のところ賛否を決めかねておる。何を、どう、判断したらええのか、分からん部分も多い。

5/17の住民投票に向けて、いくつか記事を書いて、その反響を読ませて貰って、一緒に考えたいというのが、基本的な立場や。


今回の議論、都構想賛成派も反対派も話が抽象的や。反対派の言う「大阪がなくなる」という言い方。お隣の堺市で、都構想つぶしに成功したネガティブキャンペーンの大阪版なんやろうけど、大阪に吸収される側の堺とは違って、具体的に何を言うているのか全くわからん。大阪の何がなくなるんやろ。

賛成派の方の切り札、二重行政の解消の方も、府と市を統合して大阪都(仮にこう呼んでおくで)にして、地方自治体を一本化するという話ではない。「市」がなくなる代わりに、議会や独立性の強い予算権限を持つ5つの「区」が出来るという話や。下手をすると、二重行政が六重行政になり兼ねん。

だいたい、これで簡単に、地方自治の二重行政が解消できるなら、全部の都道府県を都にしてまえ、という話やないですか。少なくとも、都道府県並みの権限を持つとされている政令市を持つ自治体には、それぞれ都構想があってもええと思える。ところが、大阪以外では、半ばつきあいで言い出しているフシのある愛知を除けば、そんな話は全く聞かん。

実は、あまり橋下市長サイドが口にせんが、大阪には「都」に向いた地理的な条件があるように、ワシは思う。別に隠すような話やない。

まず、大阪府は都道府県の中で香川に次いで小さい方から2番目や。それも、関空を作って逆転したという経緯を考えると、実質的には日本最小と言えなくもないやろ。

次に地図を見て欲しい。GoogleEarthで見るとわかるが地形的には単純極まりない。大阪平野の大部分と周辺の里山だけで出来ているのが大阪府やと一目で分かる。

鉄道を考えてみる、ワシ(鉄チャンやないから漏れはあるかも知れんが)の調べた限り、大阪府内の全ての鉄道駅から、1時間以内で難波・天王寺・大阪(=梅田)などの大阪環状線(東京で言う山手線)上のターミナル駅に着く。環状線の内側なら、府内のどの駅からでも1時間半もあれば十分に行ける。

しかも、そういう電車が、最低でも1時間に1本程度は出ている。そやから、府内最北端の能勢町や、最南端の岬町から大阪市内に通勤通学しているやつ、ざらにおる。

結局、大阪府とは、大阪市とそのベッドタウンだけで出来ている極端な一極集中の府やということになる。文化的にもほぼ均一。府内のどこへ行っても、兄ヤン姉ちゃんオッサン、おばちゃんの世界や。同じ「府」でも、日本海まで細長く伸びる京都府とは全然違う。今の日本国内で、敢えて大阪府と似ているところを探すとすれば、神奈川県ということになるんかなぁ。

確かに神奈川は、横浜・川崎に経済も人口も集中しているように見える。そやけど、横浜・川崎まで一時間以上かかり、運転数の点でも通勤圏とは言いにくい駅もいくつかあるし、厚木やあざみ野は、横浜というより東京のベッドタウンや。

さらに文化という事まで話を広げると、横須賀や鎌倉や箱根が横浜の一部とはとても言えんやろ。結局、今の大阪市の一極集中ぶりに一番似ているのは、戦前の東京市ということになる。

これだけ何もかもが市内に集中しているせいで、大阪府が何かやるとすると、最初に考慮する地域は大阪市のことになる。一方、大阪市の行政は府全体への影響を考えて動く。地方自治の視点や発想が府と市で似たものになり、よほど工夫して仕事の切り分けをせん限り、二重行政の温床に成りかねん。

「別に現状の府と市のままでも二重行政の解消はできるがな」という「正論」を言う人には考えてほしいんやが、仮に今の東京23区が合併して、一つの政令市になったらどうなるか。都の行政と市の行政がいろんな分野で重複し、理屈はともかく、実際にはかなり効率の悪い自治体になるのは目に見えていると思うがのう。

この考え方が、都構想による二重行政の解消という発想の根本にあると思う。

さて、地理的な問題の次に歴史的な問題を考える。都道府県の県とは何か、もともとは藩の近代版、本質的に農村共同体の単位やな。では都道府のうち、道は当時農業地域ではなかった蝦夷地やから別として、都と府(もとは東京都も府)は、江戸時代以前からの都市ということになる。

このうち京都府は、農村共同体の丹後や山城と抱き合わせで事実上、普通の県と同じようなもんになってしまった。まあ、誇り高い都人としては「大きな水たまりのある空き地やシカの出る空き地(どことは言わんが)と一緒にされんで良かった」ぐらいに思っておるやろ。

東京と大阪(実は京都もやが)は、近代化する前に都市化した地域ということになる。当然、いろいろな意味でシガラミが多い。けれども東京には、よそ者がガンガン入ってくることで力づくの資本主義化がおこり、よくも悪くも近代的な行政が可能になっている。東京市を特別区に分割したのも、効果があったんやろな。

ところが、大阪は旧弊が温存されまくりや。腹芸中心の商取引、よそ者を鼻であしらう役所、馬鹿にされる警察、日本人離れした順法精神、ベンチャー精神あふれる風俗業、元気なヤクザ・・・特に問題なのは、こういうドロドロした前近代が役所などの公に浸食しておるところやろ。こういう部分に、メスを入れるのが今回の都構想の裏の(と言っても半ば公然の)目標やろ。

お見受けしたところ、当アゴラで、この問題を継続的に扱ってはる北村はんの発想も、これに近いとように見える。「どないしょうもないから、一度壊してやり直そう」という思想や。基本的には正しいのやろう。

そやから、労働組合や各種補助金、福祉団体なんかの利益に敏感な共産党が、この都構想に反対なのは分かりやすい話や。防衛や原発やらの論点では対立する自民も、まあ、こっち側に付く。あ、忘れてた民主党もやな。一応、入れておく。ここいらへんの事情は、北村はんの記事に詳しい。要は、既得権擁護派対改革派という構図や。

ただ、既得権改革で気をつけなアカンのは、たいていの場合、甘い汁を吸っているヤツの回りには、その既得権にしがみついて、ギリギリで活きている人が山ほどおるということや。分かりやすい例は生活保護。不正受給を憎む余り、審査を厳格にやり過ぎると、膨大な数の本物の弱者を切り捨てることになる。

また、ある種のクーデターのように、既得権を叩きつぶした当事者がそれを握るという構図も、ようある話や。結局、都構想賛成派とは「橋下市長ならなんとかしてくれる」という根拠の薄い期待を抱く人たち、反対派とは「ハシゲは何するか分からん」という、抽象的な不安を持つ人たちということになる。何しろ、都構想の細部や具体像が全く見えんわけやからな。

さて、これからしばらく、都構想に関する論点のうち、あまりメディアに出てこないものを中心に、現地で拾ってきて書くつもりや。

今日はこれぐらいにしといたるわ

(注1)今回の住民投票でどんな結果が出ても、すぐに「大阪都」ができるわけやないが、この記事や続編では、橋下市長の一族が推進している大阪府改革を、とりあえず慣例に従って「都構想」と呼ぶことにしとくで。

久々にやる気が出てきた 山城 良雄

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