誰がため、何がための「都構想」?

明後日に迫った住民投票を前にBLOGOSでも「大阪都構想」タグが連日1位と話題ですが、本ブログではテクニカルな観点からの深堀というよりも私の解せない素朴な疑問を基に以下簡単にコメントしておきます。


先ず、大阪市民を対象に実施された「マスコミ各社による世論調査では、反対が賛成を上回る結果が出ている」ようですが、当該構想は基本この大阪府であり大阪市の住人が決めるべき話であろうと思います。

ひと月程前のブログでも述べた通り、例えば米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題というのは一つの国策、換言すれば今後の日米関係における重要な要の一つですから、沖縄の民意だけで決めるべき話でもありません。

と言いますのも、不安定化する三代目の北朝鮮あるいは軍拡にひた走る中国の状況等々考察してみれば、此の東アジア或いはアジア圏の安保環境を如何に維持して行くかという中での沖縄だからで、然も『自らの国土と自らの国民は自らの軍隊で守る』ことが出来ない現況の日本は、米国の意見も聞きその協力を得る必要があるからです。

しかしながら此の大阪都構想というのは、その地に無縁の人がごちゃごちゃ指摘するような国家的テーマでもないのではという気がします。但し、私自身この問題に関して深く徹底研究したわけでなく割合ドライにそう思うが故、之をローカルイシューと見ている可能性を否定するものではありませんが。

それから今回もう一つ考えるべきは、大阪経済の地盤沈下が叫ばれて非常に久しい中、上記構想によってそれを本当に食い止められるか、大阪が嘗ての活気を本当に今一度取り戻し得るかという部分であります。

橋下徹氏はじめ推進側の人達が発する情報を様々見る限りにおいて、之が如何に理由付けされるかを理解している有権者は殆どいないと思われますし、私自身「大阪の浮沈には殆ど関係ないのでは?」というのが都構想に対する率直な感です。

今月9日の日経新聞記事『移行効果額は? 賛成派「2700億円」 反対派「可能性低い」』に拠ると、賛成派が「民営化などの市政改革は都構想が実現しなければできない」と主張しているのに対し反対派が「現在の府市の関係で実現可能」と考えており、それ故その「数字に大きな差がある」としています。

そういう意味では例えば「カジノを含む統合型リゾート(IR)」誘致につき、当の橋下氏自身が「都構想の話とカジノの話は基本的には別です」とか「都構想が実現しないと(カジノ誘致が)どうなるか分からない」とかと、質問者の立場によって不明瞭な発言をしているとの批判が一部で為されてもいるようです。

大阪を本気で浮上させたいのであれば私には、その大変な政治的エネルギーを向かわせるべき構想は「大阪都」でなく此の「カジノ」だと思われ、当地経済の更なる地盤沈下を防ぐ上ではカジノ構想の早期実現の方が余っ程効果的だと考えます。

昨年廃案となった所謂「カジノ法案」は先月28日衆院に再提出されたわけですが、法の網の目を潜り抜けているような形でパチンコ業が営まれ続けている此の日本にあって、それよりも今回ちゃんとしたカジノ法案を通し、直接的にきちっとギャンブルに対する管理体制を整える方が健全だと思います。

3年前のブログ『日本におけるカジノ産業育成の考え方』等で指摘し続けているように、その前後で様変わりしたマカオやシンガポールの例を挙げるまでもなく、カジノ産業導入が齎す経済効果は計り知れず、少なくともその地の経済状況にプラスに働くことは確かです。

経済基盤の沈下が著しい大阪の地域活性を現実化するに、今回の都構想は何ら応えているように思われません。そうであれば具体的かつ実行性ある確実な施策として、当地でのカジノ解禁を都構想とは別に先んじて持ってきてはどうでしょうか。

BLOG:北尾吉孝日記
Twitter:北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao)
facebook:北尾吉孝(SBIホールディングス)