暗雲漂うスカイマーク再生計画

岡本 裕明

スカイマーク社の再生計画に異論が飛び出してきています。全体の三分の一の債権を握るアメリカの航空機リース会社、イントレピッド社が現在の再建計画に反対の意を表明しているのです。また、その次に大きいとされるエアバス社もイントレピッド社に同調する構えがあり、そうなれば債権者全体の半分以上の賛同が必要な同社の再建計画は練り直しを要することになります。


今の段階でなぜ、イントレピッド社が反対意思をみせたのか、明白な理由はないとされています。一部では債権のカット率が95%という数字に不満であるとされています。しかし、倒産した会社の債権者は誰もが不満を持っているものです。95%だろうがそれが90%に改善されようがカットはカットで満足など所詮出来るものではありません。

また、再生案でスカイマークが小型機主体とするためにイントレピッド社が準備していた中型機の転用が効かなくなることでその再生案に反対するとする見方もあります。

私はもう一つ、違う所に理由がある気がしています。それは全日空ではないかという気がします。

スカイマーク社の再生に手を上げた会社は非常に多く、引く手あまたの中で全日空が選ばれたことで恨みを買って同社の引き下ろし作戦だとしたらどうでしょうか?

事実、新生スカイマークの会長には投資ファンドのインテグラルから、社長には全日空から出す予定でしたが、それが引っくり返り、日本政策投資銀行から出すことに変りました。表向きは全日空の影響力が出過ぎるという事でしょうが、実は水面下で相当揉めた結果、29日に提出する再建計画を差し替えたとみて良いかと思います。

日本の航空業界に於いては国交省は日航、全日空とは別の第三極を育てることを長年企てていました。ところが残念なことにどの第三極も結局行き詰まり、それがことごとく全日空の傘下に収まっているのであります。まさに今回の再建計画は「スカイマークよ、お前もか」なのであります。

元々のしくじりは日航の倒産に伴う民主党下での再生プランで国の支援が不平等であったとされる点でしょうか?それ以降、官側は日航に対しては対外的に非常に厳しいスタンスを取り続け、全日空に甘い流れが続いてきました。私はこの行政側の姿勢がよりこの業界をドロドロにしてしまった気がします。現時点においては全日空に対して行政は明らかに甘すぎます。かといって第三極が育たないというジレンマもあるわけです。

もしも国が本当に第三極を推すならば今回の再生プランからは全日空は外すべきでしょう。確かに航空業界は競争が激しく、資金的負担も大きい一方で小規模の会社が生き残る手段がないわけではありません。アメリカはアメリカン、ユナイテッド、デルタという大手に対してサウスウエストなど新しい経営方針を打ち出して強くたくましく生きている会社もあります。カナダではウエストジェットが大きく力をつけています。それらは既存の業界の不文律を破るフレッシュさがあります。

例えばスカイマークの再生に手を上げていたHISの澤田秀雄氏は面白い候補でした。もともとスカイマークを立ち上げた方ですし、同氏の長崎ハウステンボスの再生の手腕を見てもそれは一目瞭然です。今まで誰も気がつかなかったことを次々の打ち出し、赤字垂れ流しのテーマパークを誰もが行きたくなる施設に変えたのは業界人ではないしがらみのなさという点があるかと思います。

経営を「面白い」という表現を使ってはいけないのかもしれませんが、どうせ再生するなら大手が出来ないようなプランを生み出してもらいたいものです。銀行は「前例無し」で否定するのではなく、その可能性を前向きに検討するぐらいの姿勢を見せるべきでしょう。銀行は貸してやるというスタンスではなく、一緒にビジネスをするという発想に転換してもらいたいものです。

企業再生においても日本のチカラを是非、見せてもらいたいものです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 5月27日付より