同一労働同一賃金で給料を正社員に合わせられるか?

2015年06月21日 13:08

20150621outroad

同一労働同一賃金は誰も異論のない政策の一つだと思いますが、総論賛成各論反対になりやすいようです。あるブログで「同一労働同一賃金にすれば賃金が下がるんじゃないか?」と主張していたのを見かけたのですが、同一労働同一賃金は理論的に2つの方法が考えられます。

  • 正社員の給料に非正規社員の給料を合わせる
  • 正社員の給料を下げて非正規社員の給料を上げ、中間に合わせる

おおよそこの2つの主張が行われています。社民党や共産党などの旧リベラル系の政党は正社員の給料に非正規社員の給料を合わせる、ということを前提として同一労働同一賃金を唱えています。逆に城繁幸さんを始めとする論者の方々は正社員の給料を下げて非正規社員の給料をあげて、中間でバランスさせるということを主張しており、考え方が衝突しています。

確かに同一労働同一賃金は理論的には二つの方法が考えられます。そして正社員の給料を下げて非正規社員の給料を上げるという方法は現実的に可能です(政治的にできるかどうかは別ですが)。しかし、正社員の給料を非正規社員の給料に合わせることは政治的にどうかは別として、現実的にできる方法なのでしょうか?

もし非正規社員の給料を上げると、おおよそ計算してみたら約23兆円の給与に回すお金が必要そうです。平成26年の非正規社員は1962万人、給与は約200万円です。これを正社員の平均給与である約317万円に引き上げると考えると23兆円必要、ということになります。
(参考
平成26年賃金構造基本統計調査 結果の概況l
「非正規雇用」の現状と課題

ではこの23兆円をどこから持ってくるか?がポイントになってきます。どこかから非正規社員向けの給与に回すことができれば、正社員と給与を合わせることが出来るでしょう。例えば(現実的には無理ですが)企業の配当をゼロにしてみたらどうでしょうか?批判の多い投資家への儲けを減らすという意味で、配当をゼロにした場合、上場企業全体で7.6兆円が浮きます。7.6兆円なので15兆円ほど足りません。

他にも批判の多い経営者の報酬を削ればどうでしょうか。例えばマクドナルドの日本社長であるカサノバさんの報酬はおよそ1億円です。原田さんは退職金なども合わせて3億円強を受け取ったようですので、およそ4億円と考えましょう。この4億円をマクドナルドのアルバイトに配分するとどうなるでしょうか。仮にアルバイト数が10万人とした場合、一人あたり4000円の年収アップになり正社員と同等には程遠い金額です。

結局、正社員の給料に非正規社員の給料を合わせると言っても、そのお金がないのです。ただでさえ労働者数は昔よりも増えており、かつ経済は成長していないのですから、給与の原資を調達してくることができません。ですので論理的には可能かもしれませんが、現実には出来ないのです。

誰だって給与を減らした方がいいなんて思いません。城繁幸さんも(私も同じ考えですが)正社員憎しと思って給与を下げろと言っているわけではなく、現実的に解を探そうとすれば正社員の給与を下げて非正規社員の給与をあげるしかないのです。だから現実的に考えて可能な解決策を、嫌われても正しいことを言っているのではないかと思います。

逆に旧リベラルの社民党や共産党が言うような同一労働同一賃金は誰も傷つけません。みんながハッピーになれるような主張かもしれませんが、今現実日本に適応できない方法です。信じたい気持ちもわかりますが、やはり現実の全体最適や不公平な状況を脱するには、もう解は一つしか無いかと思います。

私だって正社員の給与を下げるなんて言えば、私の友人たちの給与や取引先の従業員の皆さんの給与を下げることになるわけで、気持ちが良い訳ありません。しかし社会全体を考えるともう解はこれしか無いのではないでしょうか。もし旧リベラルの人たちが言うような、誰も傷つけないで正社員の給与に合わせられる方法があるなら、ぜひ教えて欲しいと思います。

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松本 孝行
セカンドチャンス 代表

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