【臨床心理士の真相】いいカウンセラーの見分け方

「いい精神科医を紹介して下さい」

「いいカウンセラーを紹介して下さい」

大学で臨床心理学の教員をやっていると,よく頼まれることの一つです。

講演や授業,または著書で心の病理や健康を語っていると,本当にお困りの方は私自身が力になってくれる…と期待してくださいますよね。

ありがたいことですし,私自身もご期待に応えたい気持ちは満載です。

ですが,立場的な制約もあって,直接的にご支援することは難しいことがあります。

まず,医師ではないので診断や処方はできません。法的な縛りもあって,私たち臨床心理士には精神科医の代わりはできないのです。

また,セラピスト・カウンセラーとして出会っていないので,セラピスト・カウンセラーをやってしまうと2重関係になって十分に機能できないこともあります。

(ただし,2重関係には例外もあります。これは別の機会にご紹介します。)

ただ,本当にお困りの方は,やはり支援が必要です。

その中で,「誰か紹介して下さい。」というご希望になるのです。

基本的に,精神科医もカウンセラーも相性が重要なので,どのような方が合うのかよくわからない間はご紹介は控えることにしています。

その代わり,あなたにとって「いい精神科医,または,カウンセラー」を見分ける方法をお知らせして,良い方を探すお手伝いをさせてもらいます。

見分ける方法のポイントは一つです。

あなたに一生懸命になってくれるかどうかです。

もっというと,あなたが必要としていることを,あなたの立場に立って,全力で理解してくれるかどうかです。

「なんだ,あたり前じゃないか」

と言われそうですが,当たり前のことを当たり前にやるのが意外と難しいのが心を扱う仕事なんです。

たとえば,あなたが親類との人間関係に悩んでいるとします。そして,あなたは子供の頃からその親類をいい人だと信じて,それなりに楽しい思い出も積み重ねてきました。その人との関係に時間も,労力も,交際費も費やしました。

しかし,その親類がモラルハザードと思えるようなことをしています。客観的に見たら離れたほうがいい状況です。

いいカウンセラーならどう対応するでしょうか。

「早く離れないと,もっと大変なことになりますよ」

と助言をするのでしょうか。

いいえ,違います。

いいカウンセラーは,親戚に悩まされる困惑と離れがたい気持ちの葛藤に目を向けます。そして,あなたの葛藤をそっと救い上げてくれます。

第3者から見たら「離れるが吉」であっても,当事者にとってはシンプルにそうは思えません。これまで費やした人生も,子ども時代の思い出もダメにしたくないので,苦しんでいるのです。

その苦しみを無視して「離れなさい」というカウンセラーは良いカウンセラーではありません。

あなたの立場なら何が苦しいのか…そっと理解して,その苦しみをともに分かち合ってくれるのがいいカウンセラーです。

お困りのあなた,支援を必要としているあなた,あなたがそういうカウンセラーに出会えることを心から願っています。

【執筆者】

笑顔

杉山崇
神奈川大学教授
臨床心理士
1級キャリアコンサルティング技能士
公益社団法人日本心理学会代議員
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