共通点はともに財政を他に依存していることだ。ギリシャはEU(欧州連合)に、沖縄は日本に。違いはギリシャは財政再建のために緊縮政策をとるのがイヤだと言い、沖縄は普天間基地の辺野古移転という米軍基地の負担をイヤだと言っていることにある。
だが、財政負担と軍事基地の問題は水面下でつながっている。ギリシャが緊縮財政に反対を続け、EUが支援を打ち切ってデフォルト(債務不履行)に追い込めば、ギリシャはロシアや中国への接近を強め、実質的にロシアの軍事的支配下に入る懸念がある。
それは米国を中心とするNATO(北大西洋条約機構)の安保体制を揺るがす。だから、EUも簡単には資金支援を打ち切ることができない。
一方、沖難は琉球王国時代に中国に服属し、朝貢外交を続けていた歴史を持つ。近年、中国は沖縄を支配下に置こうと沖縄の政府関係者や労組、教育界、経済人への接近を強めている。それは日本の安全保障(そして米国のアジア軍事戦略上)を不安にさらす。
だから、沖縄に米軍基地負担を求め、その見返りに多額の財政援助はしている。この仕組みは簡単には止められない。
ギリシャも沖縄も以上の背景をよくわかっている。このためか長年、自助努力を怠り、それぞれEUと日本の多額の財政援助に頼ってきた。
沖縄が戦後、米軍基地の負担を押し付けられて屈辱的な思いと苦労を重ねたことは間違いない。しかし、その代償に多額の基地賃貸料と補助金を得てきたのも事実で、賃貸料や補助金がとれなくなるからと基地の移転に反対する運動も起こっていたといわれる。
人間は自力で生活するのが精神的に健全だ。ギリシャも沖縄もそれができていない。心あるギリシャ人や沖縄人は他人のフトコロを当てにする状態からの速やかな脱却を願っているはずだ。EU、日本政府に対抗するばかりの今のやり方で、それが実現できると思ってはいないだろう。
沖縄の自立心の問題は、実は地方全体の問題でもある。財政を悪化させながら中央政府に依存するだけで、自ら打開策を考えない自治体が多い。
大阪都構想の是非を巡る住民投票で橋下徹市長が敗れたのはその象徴だろう。既得権を失うことを嫌がった高齢者や労組が反対した。この結果、大阪の財政は好転が期待できず、若者や大企業の大阪脱出が加速、元気のいいベンチャー企業や外資の誘致は困難になるだろう。
既得権を守って法人参入を許さなかった農政の結果、農業者の高齢化が進んだのと同じ構図だ。
自力再建を考えない自治体や国民が増えれば、国全体が零落の道をたどらざるをえない。規制改革、行政改革が不十分な安倍政権の成長戦略を見ると、心配のタネは尽きない。