Yahoo! とソニー不動産の提携をどう読むか(1) --- 坂口 誠二

2015年07月10日 08:48

7月7日、Yahoo! JAPANとソニー不動産が「業務提携・資本提携合意」を発表した。このニュースをどう考えるか、論評したい。

業務・資本提携の内容では、「不動産所有者が主体となって自身のマンションを自由に売り出すことを可能とする新しい不動産売買プラットフォームを共同で開発し、2015年中に公開する」とある。(以下、この不動産売買プラットフォームの事前告知サイト

この事前告知サイトを見ると、「不動産流通革命プロジェクト」と題され、「2015年 Yahoo! JAPANとソニー不動産は、日本の不動産売買に革命を起こします。」という刺激的なコピーが表示されている。

メディア企業と不動産会社がどう組むのか?

言うまでもなく、Yahoo!は日本最大級のインターネット・メディア企業で、一方のソニー不動産は、不動産の売買仲介、賃貸管理などの業務を行う不動産会社だ。昨年8月から営業を開始したソニー不動産は、資本金 8億4千5百万円で銀座に2拠点、渋谷区に1拠点の3拠点を有する。「ソニー」というブランドは知られていても、名だたる大手の財閥系や鉄道系、銀行系がひしめく不動産会社の中では、そう大きな規模ではない。Yahoo!のような媒体事業者が、個別の不動産会社とこのような業務・資本提携を行うということは、既存の不動産会社の広告主からの反発も少なからずあるだろうが、それも織り込み済みで提携に踏み切ったということだろう。

両者は、「新しい不動産売買プラットフォーム」を共同で開発するとしているが、最大のポイントが、この「不動産売買プラットフォーム」がソニー不動産以外の事業者にも開放され、真のオープンプラットフォームとなりえるかどうかだろう。

前述の事前告知サイトでは、「売り出しは都心6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区)より順次拡大予定」とある。これを読む限り、ソニー不動産が売却対応のエリアと重なっており、当面はソニー不動産のみの対応サービスとなるのかもしれない。

また告知サイトには、「このプラットフォームを通じて自分の家を自分の好きな価格で売り出すことができるようになります。<中略>Webから入力するだけでYahoo!不動産に無料で掲載されます。」とある。サービスの特徴は、Yahoo!という巨大なネットメディアに個人が無料で不動産の売却物件を提示ができるところにある。

プラットフォームに関するいくつかの疑問

自分の家や不動産を「売り出していることを知られたくない人はどうするのか」、と疑問に思う方もいるだろう。おそらくそうした声に配慮して、このプラットフォーム上でもどこまでの情報を開示するかは売主の判断で決められるような何らかの対応はするのではないか。

また個人が売り出したい不動産と希望の売却価格を提示しても「本当に買い手がつくの?」 という疑問もあるだろう。この点で注意したいのは、このプラットフォームは、個人対個人の直接取引をさせるいわゆるCtoCのサービスではないところだ。日本の不動産の取引はほとんどの場合、宅建業法に基づく不動産業者が仲介する取引になる。Yahoo!JAPANの広報に確認したところ、このプラットフォームでも、最終的にはソニー不動産が売買の媒介契約を行うことになる。

一部の報道では「インターネット上で個人間で中古住宅の売買取引できるサービスを開始する」とあるが、個人間で直接の売買取引はできない。この点は注意が必要だ。

売却依頼をするユーザーのフローとしては、

1.個人が売り出したい物件(マンション)と価格を提示する

⇒2.不動産会社(現時点ではソニー不動産と推測)から何らかのコンタクトがある
(売却価格が高い・安いとか、買い手が見つかりそうか等)

⇒3.売主は、不動産会社(現時点ではソニー不動産と推測)に売却の依頼する契約を結ぶ

といった3つのステップが考えられるだろう。なお、仮にこの3の媒介契約が、ソニー不動産だけの独占的な扱いになるようであれば、結局のところソニー不動産という一企業への売却依頼を拡大するための方策ということになり、いかにYahoo!と組もうが、プラットフォームとしての大きな発展は見込めないだろう。

なぜ、都心のマンションの売却なのか?

ところで、先のプレスリリースには、「不動産所有者が主体となって自身のマンションを自由に売り出すことを可能とする新しい不動産売買プラットフォームを共同で開発し」とある。なぜ「マンションの売却」だけで、「戸建」や「購入」がないのか、と思う向きもあろう。

確たる理由は不明だが、これまでに不動産業界の関係者に取材した中での実感は、都心のマンションの売却の仲介は、実に「おいしい」ビジネスであるということだ。

マンションの場合、土地や戸建と違い、物件ごとでの個別の要素が少ない。どのマンションのどの住戸かが決まっていれば、立地、築年数、広さ、階数、部屋の向き、全住戸の規模、売主のブランド等がわかり、およその価格が決まってくる。周辺の不動産相場と大きくかい離しない物件であれば、売却したいお客さん側につく(媒介契約を結ぶ)ことさえできれば、あとは購入したい客を他の不動産会社が見つけてきてくれるのだ。つまり、売却したいというお客と「握って」いれば、不動産会社は自ら買い手探しに動かなくともよい。

ソニー不動産の場合、自社に依頼された売主の物件は自社内では購入者をつけないようにしているので、売却したいお客さんと不動産の媒介契約をしてしまえば(売主が希望する物件価格で物件が売れるように努力するとしても)、買主を自分たちで見つけることは必要ない。特に前述のような都内でも有数の資産価値の高いエリアに限定していればなおさらである。

問題は、こうした都心の優良エリアでのマンションの売主をいかに効率的に見つけ、媒介契約までもっていけるかだが、ソニー不動産としては、最も稼ぎやすい「都心のマンションの売却」にポイントに絞った事業をすべく、ネットとスマホ時代に対応した最大手のメディア企業であるYahoo!と提携をしたということだろう。企業として収益性の高い分野に絞るのは、当然の話だ。

坂口 誠二(storie編集長)


編集部より:このブログは「storie(ストリエ)」2015年7月7日の記事を再編集し、掲載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はstorieのサイトをご覧ください。

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