日本人は戦後70年たっても、安全保障のリアリティを知らない精神的幼児のままだ。国会の中央公聴会での岡本行夫氏の証言が、世界の現状を的確に伝えているので、一部を紹介しておこう。
政府見解が出された1972年は可能性の低い米ソの軍事衝突さえ起きなければ、日本人の生命や財産が海外で危険に脅かされる事態をほとんど考えなくてもよい時代でした。しかし、その後、情勢は激変しました。
マラッカ海峡を通って日本に向かえば、その先は中国が支配しようとしている南シナ海が広がっています。一方、欧州からスエズ運河、バグエルマンデグ海峡を経てアラビア海に出る日本の船舶はソマリア海賊が待ち受けるアラビア海峡を通ります。2000年以降でもソマリア海賊の襲撃は1000回を超え、4000人を超える人質が取られました。
1994年、イエメンの内戦で96人の日本人観光客が孤立したとき、救ってくれたのはドイツ、フランス、イタリアの軍隊でした。2000年からだけでも総計238人の日本人が11カ国の軍用機や艦船などで救出されてきました。1985年3月、イラン・イラク戦争でイランの首都のテヘランが危機になり、日本人215人が孤立しましたが、日本の民間航空機は危険だからといってテヘランまで飛んでくれませんでした。それを救ってくれたのはトルコでした。
別の著名な憲法学者の方は、「外務官僚には自衛隊に入隊を義務づけて、危険地域を体験させよ」と主張しております。そうすれば自衛隊を危険地域に送る法律は作らないだろうと。事実は逆だ。危険だから自衛隊を派遣できないとされるバグダッドには二十数名の外交官が大使館に住み着いて必死でイラクの復興のために今日も走り回っています。すでに2名の外務省職員が尊い命をテロリストに奪われましたが、彼らはひるむことなくバグダッドに踏みとどまり、今も職務も全うしている。
集団的自衛権は他国のためではなく、日本人を守るためのものだ。現代戦の実態も知らない政治家や憲法学者が「徴兵制になる」とか「外交官は危険な現場にいない」とか幼稚な話をして国会デモを煽動する日本は、いつになったら一人前の国になるのだろうか。