自民党、原子力規制改革案まとまる

2015年07月24日 01:43

石井孝明
経済ジャーナリスト

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公開された原子力規制委員会の会合

143名の自民党の衆参両議院議員でつくる研究会・電力安定供給推進議員連盟(会長細田博之衆議院議員)は7月8日、同党の原子力規制に関するプロジェクトチーム(PT)(委員長・吉野正芳衆議院議員)に、それまでまとめていた「「原子力規制委員会設置法3年以内の見直し」等に関する緊急提言」を提出した。この文章は菅義偉内閣官房長官にも提出された。原子力規制委員会の制度、運用の大幅な見直しを求めるもので、今後PT内、もしくは内閣府で検討が行われ、政策に反映される。

同議連は原子力政策の混乱と、原発の長期停止を憂慮した議員の集まった研究会だ。原子力規制委員会が今秋3年目を迎えて法に記された見直し時期になったことから、今年春先から議員の議論、そして有識者からの意見聴取を行ってきた。議論では、事業者と対立状態にあり、「独善」の批判が根強い原子力規制委、規制庁の活動への疑問が、多くの議員から示された。

GEPR・アゴラでは、その審議の内容を伝えた。「自民党、原子力規制の改革に前向き-実現は不透明」。このほど、議連の最終案を入手したので抜粋を紹介する。自民党はこれを積極的に広報せず、またメディアも取り上げていない。また、この提言がどこまで実現するかは分からない。しかし、この文章が、今後規制改革での議論の基点になるだろう。

1・炉規制法の見直し

提言では、原子力規制委員会設置法だけではなく規制政策の根幹を定める原子炉等規制法について、改正の必要性を指摘した。

(1)これまでの炉規制法では明記されなかったが、提言では規制の目的を「原子力施設の安全な利用」と明記することを求めた。原子力規制の混乱で原発の再稼動が遅れ、事業者が損害を受けている現実を批判したものだ。

(2)活断層審査で、法で明記されているのに、規制委員会が運用していないと批判を集める「原子炉安全専門委員会」の機能を強化した上で、専門家による審議を活性化させることを求めた。

(3)特に、活断層、津波問題で、基準が明確でなく混乱しているために「地震津波安全専門審査会(仮称)」を置くことを求めた。「現在、重要構造物の下に活断層がある」と判定された日本原電敦賀2号機は廃炉の可能性に直面している。この問題を含め、活断層審査について専門審査会での再審査も求めている。

(4)審査官の裁量が影響する現在の審査を、リスク・確率評価にすることも求め、事業者や原子力の製造者、研究者が、規制を検証しやすくすることを求めた。

(5)原子炉の寿命を40年にした問題で、審査機関が短いことから廃炉が続くことが懸念されている。この点について、その見直しと、余裕を持った審査を求めた。

2・原子力規制委員会の見直し

原子力規制委員会の設置法が今年3年を迎え、その見直しが同法に書かれている。それに基づき、規制委員会、規制庁の組織の見直しを求めた。

(1)規制委員会・規制庁は現在、事業者と対立関係にあることが懸念されている。そのために提言では、規制委員・規制庁職員を縛る「行動指針」の明確化を求めた。

(2)所管官庁の環境省から、防災を担当する内閣府への移管を求めた。

(3)独立性は維持しつつも審査活動をチェックするために、「安全諮問委員会(仮称)」を組織内に設けて、国際的な基準と照らして監査を行うことを求めた。

(4)法律に基づかない行政指導が続いていることから、規制ルールと通達の文章化と、法適合性の検証を求めた。

(5)規制スタッフが公務員に偏在していることから、専門性を持つスタッフの中途採用、そして規制委員会委員の判断に役立てるためのスタッフの採用と「規制委員会室」の設置を求めた。

(6)バックフィット(規制の遡及適用)のルール明確化を求め、審査ガイドをつくることを求めた。ただし、以前から問題になっている米国のような負担分担の行政と事業者の明確化については、提言の中に盛り込まれなかった。

 ◇  ◇  ◇

以上の議論は、これまでGEPRで有識者が繰り返し指摘してきた原子力規制の諸問題に一定の解決策を示すものだ。安倍政権の中では、原子力・エネルギー政策の正常化の優先順位は、残念ながら高くないもようだ。しかし、早急な実現を行ってほしい。

自民党議連の議員らは、原子力規制を簡単にして、安全性をおろそかにしろとは、誰も主張してない。法の合理的運用、適正な活用を求めている。これは現時点では適切な問題提起である。「規制見直しは悪」などという単純なレッテル貼りの議論はやめるべきだ。原子力の是非と、不適切な原子力規制行政の是正は、別の問題である。混同して政治的な騒擾にするべきではない。

原子力政策の混乱、停滞によって、原発の再稼動の遅れで日本の国富はこの3年で約13兆円も代替燃料の購入でアラブの産油国に流失。さらに原子力研究の遅れ、電力会社の収益悪化、電力料金上昇という諸問題が発生している。こうした経済上の危機を、原子力規制委員会、規制庁は直視すべきなのに、具体的な対応をしていない。そして政治もこの状況を放置している。

関係筋によれば、規制庁幹部は、非公式の会合で「電力会社が悪い」と責任を転嫁する発言を繰り返しているという。自らの問題改善の努力をしないのに大変な問題のある組織であると思う。この旧原子力安全保安院から続く、そして日本の官僚組織の宿痾である責任逃れの体質が、福島事故の一因になったのだ。

外部から問題は是正するしかない。この行政活動の適正化の自民党の主張を、政治も規制委、規制庁も真剣に受け止めるべきであろう。

原子力は安全性と同時に、その活用も考え、運営しなければならない。現在は安全追求に、原子力規制政策が傾きすぎている。

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