富裕層にとっての東南アジア

2015年07月30日 09:43

富裕層がシンガポールや香港に拠点を移す話はよく聞こえてきます。国税が出国税までかけながらも外に出ていく日本人が求めるのは何なのでしょうか?

私の周りにも複数いる東南アジアマニア。拠点をシンガポールなり、フィリピンなりに構え、そこから東南アジアの伸び盛りの都市の不動産に投資をします。あるいはカンボジアならば現地通貨リエルより米ドルが街中で普通に流通し、預金も米ドル建てが可能。しかもその利息は米ドルなのに5-6%以上ありますから世界でも有数の米ドル運用ができるところということになるかもしれません。(引き出しに制約はあります。)

国によっては高い成長が期待できますし、一部の東南アジアの都市では駐在員や外国人向けの賃貸住宅、あるいは宿泊施設が足りないところもあります。そのため、それらを満たすための新規投資をするという面白みもあり、日本にはないダイナミックな動きを投資を通じて楽しむことができます。

富裕層の方というのは言い換えれば行動がアグレッシブで頑張って働き、稼ぐということに焦点を合わせてからこそ成し得た一握りの方々です。その人たちが自分の資産に更なる発展を望むのは当然のことであり、あくなき、マネーへの追及は死ぬまで続くのだろうと思います。(ある日突然、稼ぐのを止めたという富裕層の方を私は聞いたことがありません。)

その中で東南アジアは数々の特徴ある小国が集まり、バラエティに富んだオプションがある点に於いて欧州に似ているとも言えそうです。そう考えると日本はさしずめ欧州におけるイギリスのようなものでしょうか?

日経で一年を通して組んでいる特集、「税金考」。その記事からは日本の相続税率が世界の中で突出していることがわかります。基礎控除も少ない方ですから合算させるとごっそり持っていくという表現が正しいのだろうと思います。また、まだ始まってもいないマイナンバー制度の今後数年間に渡る拡充プログラムも発表されており、ルールの逸脱が厳しくなり、きちんと捕捉されることから逃れることはできません。

一方で国によっては厳しい相続税により頭脳流出が起きたところもあり、その方針を撤回したケースもあります。今後国税の厳しい取り立てが予想されるなら、仮に出国税があろうが、海外資産のディスクロージャーがあろうが、日本では税金を払いたくないという人は確実に出てくるでしょう。そして、それらの人は居住者として受け入れてもらえる国、税金に優しい国を目指します。決して欧米の先進国ではありません。なぜなら居住者としてのビザが取れない、あるいは東南アジア諸国ほどの税制の魅力がないからでしょう。更に欧米は移動に不自由で且つ、時差もあります。東南アジアはまさに日本から見た羨望の大陸なのかもしれません。

富裕層にとって節税というのは人生を通したゲームであります。如何にして数%の税率を下げるかに血眼になり、情報を集め、それを成し得た時、勝者の気分を謳歌します。

勿論、このような人は日本人のほんの一握りの中の一握りです。数にしてみれば4桁数程度かもしれません。大多数の勤労者や庶民にとって関係ない話でありますが、グローバル化が進み、海外勤務経験者が急速に増大する中、居住地を日本に限定しない人も当然増えてきています。

住めば都と言いますが、駐在経験者が日本と比べてあの国のあの街はよかったな、いつかはまた住みたいと思うようになった時、日本人の海外流出は更に進む可能性があります。1989年の海外居住者数は587千人でしたが昨年は1290千人にまで増えています。実に2.2倍です。またこの5年で13%増。更に地域別でみれば東南アジアの日本人居住者の増加幅は突出しており、年平均5%程度増えています。

海外の生活は経験者でないとなかなか気が進まないものですが、一度経験すると病みつきになる人も多いものです。先日、高校生向けに講演をした際、「海外に住みたくない人は?」と聞いたところ、元気よく手を上げた男子生徒が「日本食が食べられなくなるから」という理由だったのは海外生活を知らない故の思い込みなのでしょう。

相続税だけが海外脱出組の理由ではないでしょう。政府はそのあたりのセンスの移り変わりをまだ十分に理解していない気がします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 7月30日付より

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