中国、人民元買い支えを狙い米国債を売却中 --- 安田 佐和子

2015年08月28日 15:08

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3月、ロシアが米国債を売却したとのニュースで激震が走ったのも、今は昔。足元で最悪シナリオは、米国債保有高で世界第1位をひた走る中国の放出でしょう。悪夢は、現実に起こりつつあります。

ブルームバーグが関係者の話を元に伝えたところ、中国は今月に入り米国債売却に着手しました。人民元切り下げ後、自国通貨の下支えに向けドル資金をかき集める狙い。中国本国のほか、決済機関を抱えるスイスやベルギーを通じ実施中だとか。別の関係者いわく、米当局には打診済みだといいます。

ジャナス・キャピタルに移籍した債券王、ビル・グロスもツイッターで驚きをぶつけます。

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(出所:Janus Capital/Twitter)

中国の外貨準備高は7月に3兆6513億ドルと、6月の3兆6900億ドルから減少。

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(出所:Trading Economics

中国とベルギーの米国債保有高(青)と、外貨準備高(緑)の関係。

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(出所:Zerohedge

6月対米証券投資では米財務省証券投資は698億ドルの買い越しとなり、2014年2月以来で最高を記録していました。中国株安でリスク・オフ相場の火蓋が切って落とされた結果、安全資産の米国債に資金が流入したようです。4ヵ月連続で買い越し、中国の保有高も1兆2710億ドルと4ヵ月連続で増加していました。保有高は1兆2710億ドルと2013年11月に達成した過去最高の1兆3170億ドルを下回りつつ、日本の1兆1970億ドルを抜きトップを独走していたものです。

足元で、いかに様相が様変わりしたかが伺えますね。

翻って、米債市場は比較的落ち着いています。本日の米7年債入札は、堅調そのもの。応札倍率は2.53倍と前回の2.47倍を超え、2014年11月以来の高水準を達成しました。海外を含む間接応札比率は50.8%と前回の49.1%から上昇。ディーラーの比率も35.0%と前回の38.9%を下回り、米債相場に混乱の兆しは現れていません。ソシエテ・ジェネラルの推算では、過去2週間で米国債を含め外貨準備高を1060億ドル切り崩したようですが、嵐の前の静けさなのか。あるいは米国債は嵐のなかで輝くのか。

日本が中国の穴を埋めるにも、限界があります。シティグループの試算では、エマージング国などが保有する米国債5兆5910億ドルを仮に1年かけて10%削減させた場合、米10年債利回りを108bp(1.08%ポイント)も押し上げる公算。金額ベースでは米国内総生産(GDP)の3.07%に相当するだけに、見逃せません。中国が大規模な売却に踏み切ったとすれば、いかに甚大な上昇圧力が掛かるかが読み取れますよね。

現時点で、米債市場はおろか米株市場も中国の米債売却に頓着せず。オバマ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)という名の下に中国保有の米国債を無効化するはずもないのに、なぜ楽観的なのでしょうか?

冷静に考えれば、中国はもとよりドル資金を調達するため米国債を一挙に手放すと考えづらい。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番であるジョン・ヒルゼンラス記者は、国際金融協会(IIF)の数字を元にエマージング国における社債が2008年から2倍の6.8兆ドルに到達したと報道。さらに、ドル建ての債務が占める割合は2008年の15%から2015年5月までに40%へ膨れ上がったと伝えます。つまり自国通貨安で債務が膨れ上がるリスクの裏でひたすら米国債売りに走れば、ドル資金が枯渇する異常事態すら発生しかねません。いわば無茶な米国債売却は、タコが自分の足を食べて生き残りを図るようなものではないでしょうか。

米国債売却で世界市場を混沌へ落とし込んだ後でエマージング国が経済危機に陥った場合、政治的に国際通貨基金(IMF)をはじめとした国際機関への支援要請で障害となりかねない。無防備なドル売りには膨大な代償が伴うだけに、アメリカ人は静観しているのかもしれません。

(カバー写真:Mike Behnken/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年8月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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