米国、インドネシアで「トップセールス」二連敗の新幹線

2015年10月05日 12:42

日中が受注合戦を繰り広げていたインドネシア・ジャワ島高速鉄道計画は、白紙撤回の後に中国が受注したとして波紋が広がりましたが、むしろ安倍内閣にとって痛手が大きいと思うのは、それに先立って、習近平の訪米中に米国のロサンゼルス・サンフランシスコ間の高速鉄道を中国が受注したことではないでしょうか。


アベノミクスの成長戦略のなかには、インフラシステム輸出も掲げられており、他国との素早い交渉を自らリードするトップセールスを実行し、2020年までに世界市場での受注額を30兆円まで拡大するという意気込みで、この4月も安倍総理自らが米国に高速鉄道受注にむけて「営業」攻勢をかけたはずでした。
安倍首相、「新幹線」を米国に売り込みへ

それが失敗で終わったのですから、トップによる「営業」としてはスタートから躓いたことになります。そういえば、これまで海外で成功した例として、川崎重工が2000年に受注した台湾の高速鉄道プロジェクト、日立が12年に受注した英国のインターシティ・エクスプレス・プログラム、三菱重工が今年受注したカタール初の地下鉄システムがありますが、安倍さんがトップ「営業」をしたという話は残っていません。どうなんでしょうね。

安保法制や高額な武器輸入など米国にとって都合のいいところでは歓迎を示しても、実利では日本と中国は等距離にあり、条件のいい相手と握手するのが米国だということを見抜けなかったのでしょう。いくら新幹線の「品質」がいいからといっても、「営業」では中国のほうが上手だということが示されたのです。

インドネシアの高速鉄道に関しても、実は中国との交渉のほうが先行していて、日本が受注できる可能性はもともと低かったにもかかわらず、日本のメディアと政府が勝手に踊っていただけなのかもしれません。かなり顛末を詳しくレポートしている「インドネシア新聞」から引用しておきます。

皆さんはいつの時点でインドネシアの日本発新幹線導入が危ういと感じられましたか?この話、前提条件としておかしいところがあり、自分の知る限り、一切のメディアはそこを突いていません。それは、インドネシア国営企業省の立ち位置です。国営企業省とは、その名の通り、インドネシア政府配下の省です。この省が、現地メディアに露出し始めたのは、2015年3月25日~ジョコウィ一団が訪中し、「ジャカルタ-バンドン高速鉄道プロジェクトに関する覚書」が中イ間に交わされた頃からです。

この時点で、バンドン市長リドワンカミルは、高速鉄道導入について「大統領は中国案前提で進めている」と述べています(※ 2015年3月25日tempo紙)。高速鉄道のホスト都市となるバンドンの市長はこれ以外にも複数回、中国が有力という発言をしていますが、日本メディアはこれも全て無視しています。こういうスタンスはかの時代から変わらないみたいです。

インドネシア高速鉄道報道:日本メディアのおかしな報道と後出しジャンケン(完結編)

中国に関しての日本のメディアの報道では、そういえば、つい最近でも、どのテレビの情報番組かは忘れましたが、水資源をめぐって中国人が土地を買い漁っているということを取り上げ、気がついたら日本の水資源が中国人に抑えらることになりかねないという、いい加減な話を番組内で平気で取り上げていました。それを聞いていたタレントの方でしょうか、「怖い、怖い、嫌だ」とか言っていましたが、呆れ果てます。

土地の所有権と水資源の利用権は別で、いくら山林を購入しても、すでに水資源が地元で利用されていたとすれば、勝手に取水し、中国に輸出するというようなことはできません。もっとよく調べてから報道しなさいよ、それなら中韓の反日と同じレベルじゃないかと言いたくもなります。それで思惑が外れて、利用価値のない山林を買わされ損をするのは投資した中国人のほうで、もし、そんな詐欺のような山野商法が横行しているのなら、日本の信用を損ねるので取り締まるべきでしょう。

品質を過信し、情報収集能力に欠けたために、ニーズの変化についていけず敗北していった半導体などの歴史が日本の「新幹線輸出」でも再び繰り返されるのでしょうか。営業は情報収集力でまずは決まる、一方的な売り込みだけでは駄目だということをぜひ今後の教訓としていただきたいものです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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