なぜ「いい人」はうつ病の予兆なのか?

うつ病は身近な問題です
うつ病は社会や文化が成熟する過程で増える心理的な問題です。日本はバブル経済を経て成熟期に向かっていますが、その中でうつ病に悩む人が増えまじめました。
すでに厚生労働省の統計は日本がうつ病100万人時代に入ったことを示唆しています。さらに疫学調査は日本人の約15%が一生に一回以上はうつ病に陥ることを示しています。あなたに7人の友人いれば一人はうつ病に苦しむ計算です。もはや他人事とは言えない時代です。
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うつ病の真実が知られていない
しかし,日本ではうつ病の真実がほとんど知られていません。特に心理学的な真実は全くと言ってよいくらい知られていません。
すでに罹患した人を対象にした精神医学と違い、心理学は正常な心理からうつ病の心理に移るプロセスを研究してきました。つまり,予防に役立つ所見が心理学にはたくさんあります。その中から、今日はうつ病の本当の予兆についてお知らせします。

そもそも「心」とは何か?
結論を先に述べれば、うつ病の本当の予兆は自分の立場への戸惑いとそれに伴う人柄の変化です。まず、なぜ立場への戸惑いが予兆になりえるのか解説しましょう。そのためには,心の仕組みから紹介しなければなりません。

そもそも心とは何でしょうか?
心にはいろんな機能があります。中でも特に重要な機能は、周りの環境と自分の状態を把握するセンサー機能です。
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心は「立場のセンサー」
つまり、心は周りの状況や環境の変化に敏感に反応するのです。そして,人は物理環境よりも社会環境を生きる方向に進化しました。物理環境に敏感な人,言い換えれば場の空気を読むのが苦手な人は「発達障害」と言われるくらいです。なので、私たちの心は社会的な状況の変化や立場の変化に敏感に反応します。
誰かの些細な態度が気になって頭から離れない…という経験は誰にでもあると思います。たとえば「蔑ろにされている」、「いいように使われている」、「下に見られている」、「なめられている」と他者の自分への態度が気になったことはありませんか?心は自分の立場のセンサーなのです。

「いい人」はすでにうつ病?
誰かの態度が悪いと腹が立つ場合もありますよね。それで他者の態度が改善することもあります。ですが、腹を立てても余計に立場を悪くするだけのこともあります。そんなときは「どうにもならない」とあきらめたほうが楽です。そして、その他者やコミュニティから逃げられないとき、少しでも立場をよくするために私たちは「いい人」をはじめるのです。人を不快にさせないように嫌な顔もせずに、みんなが喜ぶ自分を懸命にやっています。疲れの苦痛よりも立場をキープできる喜びを優先してしまうのです。そして、身も心も疲れ果てるとうつ病に陥るのです。

よく「まじめな性格」がうつ病の原因と言われていますが、実は原因ではなくすでにうつ病の予兆なのです。世の中には本当に成熟した「本物のいい人」もいますし、上手にガス抜きができる人もいます。ですが、あなたの身近な「いい人」もうつ病の予兆なのかもしれません。もしかしたら、「いい人」のあなた自身もすでにうつ病の世界に入りかけているのかもしれません。

うつ病予防の人づきあい
拙著、『読むだけで人づきあいが上手くなる』はうつ病に陥るかもしれない「いい人」のために書きました。人づきあいで気まずさを重ねると、ますます立場を悪く感じてしまうからです。いい人づきあいもうつ病予防なのです。ぜひ、試してみてください。

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【執筆者】
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杉山崇
神奈川大学教授
臨床心理士、1級キャリアコンサルティング技能士
公益社団法人日本心理学会代議員
精神科、教育委員会、企業メンタルヘルス事業所などで20年余り心理職を務める。
研究者としてはうつ病の対人関係と心理療法の研究で国費助成を20年弱得ている。
「心理学でハッピーになるお手伝い」を目指して、yahooニュース,mocosuku womenなどでも「使える心理学」を配信中!

最新著書
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