スポーツで戦力均衡が必ずしも重要とは言えなくなった --- 鈴木 友也

2015年10月30日 07:00

先日、「戦力均衡の重要性」で定期的にファンに「優勝するかもしれない!」という期待感を抱かせることが重要であることに触れました。あれから、メッツはあれよあれよと言う間にワールドシリーズまで上り詰めてしまいました。

今、マンハッタンではスポーツバーやレストランは「メッツ、メッツ」で大騒ぎで、開幕したNBAやNHLの陰が薄く感じるくらいです。もうこの余韻でメッツファンはあと10年位は楽しめるかもしれません(笑)。

ところで、あのポストをきっかけに知人と意見交換したりする中で、戦力均衡に対して少し考える機会ができました。そして、結果的にはスポーツリーグ経営における戦力均衡の重要性は相対的に低下しているのではないか、と思うに至りました。

※野球界はドラフト制度で戦力均衡を図ってきたが…
(画像は2015年NPBドラフト会議公式サイト)

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理由は2つあります。

第1の理由は、近年の米国スポーツビジネスにおいて、「売り物(商品)」の定義が変わってきたためです。従来まで、スポーツビジネスの商品といえば「試合(観戦)」でした。しかし、テレビの大型化・高精細化・低価格化により、テレビ視聴でも十分に迫力ある観戦ができるようになってきたことや、若年層のエンタメ消費形態が変化し、1つの娯楽をじっくり楽しむより、複数の娯楽を並行してゆるく楽しむようになったきた結果、試合に足を運んでくれるコアファンにとって、テレビ視聴と差別化し、若者のニーズにフィットするために試合観戦以外の要素がより重要になってきています。

そのため、もちろん観戦機会の提供は本質的で中心的な提供価値なのですが、2~3時間の滞在時間中のファン体験を総合的に捉え、ファン体験を構成するあらゆる側面(駐車、入場、観戦、回遊、飲食物・グッズ購入、トイレなど)でのエンタメ性を上げて行く方向に施設のコンセプト設計やサービス提供がシフトしてきています。

これにより、試合観戦がファン体験に占める相対的な比率が下がってきているのですね。極端に言えば、試合に負けても楽しめる(顧客満足度が下がらない)のが究極的なファン体験ということになります。

第2の理由は、ビジネスの国際化の進展です。国内のファンは基本的にフランチャイズを軸にした「地域的な絆」を持つファンが大多数です。そして、そのファンにとっては継続的に応援する上で勝ち負けが大きな要素となります。

しかし、海外のファンは「地域的な絆」を持たないため、応援軸としては最高のパフォーマンスを提供する「最強チーム」を応援したいという動機が主になるのではないかと推測します。そのため、ヤンキースやマンU、バルサといったメガブランドの一人勝ちの状況が生まれやすいわけです。

つまり、海外市場では戦力均衡により各チームの戦力を拮抗させるよりは、むしろその逆に圧倒的に強いチームを作る方がファンを得やすいのではないかと思うわけです。

ところで、先日、SBAのセミナーでNPBEの荒木さんと対談した際(お蔭様で満員御礼でした!)、荒木さんが面白いことを言っていて「なるほどなぁ」と思いました。荒木さん曰く、世界のスポーツは「ドメスティック・スポーツ」「インターナショナル・スポーツ」「グローバル・スポーツ」の3つに大別できると。

「ドメスティック・スポーツ」は国内のみを主な市場としているスポーツで、日本のプロ野球やJリーグがここに該当します。「インターナショナル・スポーツ」とは、海外市場も事業対象になるものの、基本的に国内での売り物を海外でも横展開しているスポーツです。基本的に、米国4大スポーツはここに入ると思います。最後に「グローバル・スポーツ」ですが、これは海外市場もビジネスになり、かつ海外では売り物が発展的に展開されるスポーツです。ワールドカップなどがこれに該当しますね。

で、それぞれのモデルで戦力均衡の重要度を考えると、ドメスティックに近い方が相対的に重要なんだろうなと思います。戦力均衡とは、事業の外部環境に結構左右されるコンセプトなのかもしれません。

とはいえ、国際化が進展しようと事業の核になるのは国内ビジネスですし、商品価値を構成する要素が多様化しても、その本質的で中心的な価値は勝敗であることに変わりはないですから、戦力均衡が不要になるということは、少なくとも米国の閉鎖型スポーツに限って言えばないだろうなとは思います。


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編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2015年10月29日の記事「戦力均衡の重要性(その2)」を転載させていただきました(見出し、画像はアゴラ編集部で担当)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。

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