領土問題への処し方

2015年11月02日 07:00

三国首脳会談の現実


日中韓の三国首脳会議が三年半ぶりに持たれた。それまで定期的に行われていたこの会議がこんなにも長く開かれてこなかったのには、勿論幾つかの理由があり、その原因は実は未だ何一つ解消されてはいないのだが、それでも、三国とも「経済関係でプラスがあるのなら、いつまでも角を付き合わせていても意味はない」とは考えたという事だろう。

※3年半ぶりの日中韓首脳会談。定例化を確認したが…。(内閣広報室動画より、アゴラ編集部)
総理会見
いや、正確に言えば、この間に各国首脳の姿勢に唯一つだけ変化があった。それは、就任早々「村山談話の見直し」を示唆する発言等を行って、中韓のみならず米国までも心配させていた安倍首相が、その後はトーンダウンし、米国での一連の演説では極めて常識的な発言に終始し、少なくとも取り敢えず米国だけは安心させた事である。

安倍首相にすれば、経済問題で関係改善を望むのは三カ国とも同じなのだから、歴史問題等では、米国さえ納得すれば、敢えて筋を曲げてまで中国や韓国に譲歩する必要はないと考えている事は明らかだし、私を含む日本国民の多くも、それで良いと思っている。中国代表が習近平主席ではなく李克強首相になったのも、中国としても「性急に関係改善を求める必要はない」と考えている事の表れだろう。但し、米中間の危ない綱渡りをしている韓国だけは、米国向けのジェスチャーとして、ここで一定の役割を果たしたいと強く思った様だ。

因みに、安倍首相が登場した時には、「日本の左翼勢力とも気脈を通じて強くその方針に反発すれば、状況を好転させうる」と読んだ節がある中韓の指導者達も、結果として「彼等の日本に対する強硬姿勢が、むしろ衆院選での自民党の大勝を後押しする結果になってしまった」という事を、今となっては若干は反省しているかもしれない。

三国の関係は何故悪化したのか?


さて、日韓関係が悪化したのは、先ずは、「李明博大統領の竹島上陸」と日本人の神経を逆なでにするような彼の一連の言動。次に、「過去の正当化路線の推進者」とみられる安倍政権が日本で誕生した事。そして、最後に、朴槿惠大統領の一連の「告げ口外交」による事は間違いない。日本人にすれば、自分の方から「嫌韓」になる必要は全くなかったが、「あれ程やられれば、もうそうなるしかない」というのが本音だろう。

一方、日中関係の悪化は、先ずは日本政府による「尖閣の国有化」で始まり、これが「反日暴動」や「尖閣への民間人の上陸や民間船舶の接近」につながり、更にこれがエスカレートして、尖閣付近で日中両国の戦闘機が偶発的に戦闘状態に入りかねない危機までが生じるに至った。また、この間に、安倍首相の「村山談話の見直し」発言が中国側を神経質にさせた事も否めないだろう。

バルカン半島や中近東とは異なり、日中韓三カ国の間には民族問題や宗教問題はない。昔と異なり、今は国際共産主義運動もなくなったので、イデオロギー対立もない。韓国の意図は一寸分からないが、「歴史認識問題」が直接「経済的利害対立」に結びつく様でもなさそうだ。

という事は、「中韓両国の政権は、国内対策上、反日的な言動を繰り返さざるを得ない」という特殊事情を除けば、本質的な日中、日韓の対立点は、とどのつまり「領土問題」しかなかったという事だ。それなら、問題は簡単だとも言える。

領土問題には「現状の固定化」しかない


何故簡単かといえば、「現在の国際的な枠組みの上では、領土問題の解決は取引によるしかありえない」からだ。つまり、将来の国際社会に何か抜本的な変革が生じるまでは、領土問題は、意見の異なる両国がお互いに自らの主張を繰り返すだけで、何の進展もありえないという事だ。両国民とも、自国の政府が安易に妥協する事は一切認めないだろうから、解決策はどこにもないという事だ。

歴史的にどんな事象を言い立ててみても、それではその前はどうだったのかと言いだせばきりがない。最後には、南沙地域について中国が言っている様に「太古の昔から」等と言い出すのがおちだ。ではどうすれば良いかといえば、「どの国も、現状(一方の国による実効支配)を力で変えようとしてはならない」という事だけを原則として認め合うしかない。これが平和を守る唯一つの道だ。

一方がこの原則を無視して、あくまで力で現状を変えようとしたらどうするか? 残念ながら、その場合は、力で押し返すしかない。それでは戦争になるではないかと言われても、それ以外に方策がないのだから仕方がない。だからこそ、どんな国でも、相応の自衛力を持ち、それで足りない部分は利害の対立の少ない国との同盟に頼らざるを得ないのだ。

三地域に対する具体的方策


北方四島の問題は、要するにロシアとどのような取引をするかという問題だ。日本人からすれば、北方四島はロシアが不法占拠しているに過ぎないと言いたいだろうが、第二次世界大戦の末期にロシアは日本に宣戦を布告し、この四島を占領したのだから仕方がない。(日本だって第一次世界大戦では一方的にドイツに宣戦し、山東半島の利権を奪おうとした。)但し、ロシアは狡猾だから、あまり大きな経済的な見返りを与えない様に、日本は十分に注意した方が良い。

竹島(独島)については、日本があくまで領有権を主張し続けるのはよいが、現時点では韓国が「実効支配」をしているのだから、具体的には何もしようがない。そのうちに日韓関係に何か驚くような変化が生まれるまでは、百年でも二百年でも現状を維持するしかない。

尖閣(魚釣)諸島については、日本は「実効支配」をあくまで貫き通すしかないし、それが正しい。そして、残念ながら、それは物理的な力によるしかないから、不退転の覚悟が必要だ。しかし、中国側があくまで領有権を主張しているのなら、その根拠が如何に薄弱なものであっても、そこに「紛争状態」が存在しているという事実は認めざるを得ない。その上で、もし「両国における海底資源の共同開発」等というシナリオが現実的と認められるなら、真剣にこれを検討するにやぶさかであってはならない。

松本徹三

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