インボイスって何?

消費税をめぐる議論の中で、「インボイス」ということばがよく使われます。日本語では単に「請求書」という意味ですが、EU(ヨーロッパ連合)で採用されている付加価値税(VAT)では税額証明という重要な役割を果たします。

次の図は毎日新聞の記事から借りたものですが、上は日本の請求書、下はEUで使われているインボイスです。日本式だと卸B社が消費税をいくら納税したかわからないので、スーパーA社が払う消費税の内訳も計算できません。今は一律8%だからこの方式でもいいのですが、税率が10%に上がって一部の商品が軽減税率8%になると困ります。

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B社の納入した商品の原価が20000円で税率が全部10%だとすると、納税額は2000円ですが、全部8%だとすると1600円です。しかし日本式のインボイスでは、B社がいくら消費税を負担するかわからないので、それを仕入れたAスーパーも、消費税をいくら上乗せしたらいいかわかりません。

これに対してEU式のインボイスでは、図の下のように軽減税率の商品を区別して税額を書くので、A社はここに書かれた税額1800円を価格に上乗せし、税務署に払えばいいわけです。しかし商品別に仕分けすると、消費税を計算するコンピュータのシステムが複雑になり、今から税調で議論していては2017年4月の増税に間に合いません。

そこで公明党の提案する「簡易インボイス」では、B社が自己申告で税額を書くことになっています。たとえばB社が「当社の納入した商品はすべて税率10%」とインボイスに書くと、A社への卸し値を2000円値上げできますが、実際の納税額が1600円だったとすると400円もうかるわけです。

公明党方式の欠陥は、B社がいくら消費税を負担するか証明できないことです。EU方式では内訳を書いて税務署にも出すので不正はできませんが、公明党方式では総額しか書かないので、B社は税務署にはなるべく多くの品目で軽減税率を申告し、請求書には税額をなるべく大きく表示するでしょう。

これが益税です。今でも非課税業者が消費税を上乗せしてもうけていますが、今度は課税業者も納税額をごまかしてもうけることができます。このようにインボイスなしで一部の商品だけを軽減税率にすると、税額のごまかしが横行して大混乱になり、益税の規模は日本全体では数千億円になるでしょう。

インボイスで金の流れを透明化するのは、ちゃんと税金を払っていない商店主や自営業者などがいやがります。公明党はそういう支持者が税金をごまかしやすいように、こんなインチキな方式を提案しているわけです。それによって公明党は選挙で票をかせげますが、損するのは消費者と納税者です。