高橋洋一よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!

高橋洋一氏が「民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!」というコラムを書いている。もはや彼の話なんか誰も信用しないが、朝日新聞のように嘘の上塗りをするのは困ったものだ。彼の出すのは「安倍政権で就業者数が増えた」という次のグラフだ。


就業者数は安倍政権が成立する前の2012年から増えているが、2013年から就業者が増えたのは事実である。しかし労働力調査でいう就業者とは、1ヶ月に1時間でも仕事をした人で、パート・アルバイトも含まれる。非正社員数は、次の図のように2009年にリーマン・ショックで減ったあと、民主党政権でも増えており、就業者の増加は非正社員の増加でほぼ説明できる(後者のほうがやや多い)。

就業者数
就業者数と非正社員(右軸)の数(万人)出所:労働力調査

現在の就業者数はリーマン・ショック前の水準に戻っただけで、この変化は循環的なものだが、その中身は大きく変わった。それは週刊東洋経済も指摘するように、2010年代に団塊の世代が引退して再就職し、非正社員の比率が40%を超えたことだ。上の数字からわかるように、正社員は減り、総労働時間も減っている。

要するに、就業者数が増えたのはアベノミクスのおかげではなく、いったん退職した高齢者が非正社員になり、正社員がパートタイムの非正社員に代替されただけなのだ。したがって私が以前にニューズウィークで説明したように、失業率は下がっているのに実質賃金は下がっている。

その他の高橋氏の議論は「オレサマ潜在成長率は日銀よりずっと高い」という類の笑い話で、論評にも値しない。普通の経済学を勉強すれば、金融政策で潜在成長率が上がるはずがないことは自明だ。経済学者を自称する前に、少しは経済学の勉強を(千葉商科大学以外で)してほしいものだ。

彼はアゴラの創立メンバーだから、反論は歓迎する。今まで彼が繰り返してきた「物価はマネタリーベースで決まる」とか「インフレ目標で2%のインフレになって経済は劇的に回復する」とかいう予言がその後どうなったのか、自分の言論に責任をもって検証してほしいものだ。