日本の観光競争力を支える文化資源

今年は琳派400年記念イベントが京都で開かれています。琳派といえば風神雷神図を思い描く人が多いかもしれません。日本が誇ることができる美の系譜です。家系ではなく、歴史の中で引き継がれていった作風ですが、その創始者のひとり、本阿弥光悦が徳川家康から鷹峯の地を拝領し、一族や法華宗徒仲間を率いて移住し芸術村を築いたのが今から400年前のことです。
琳派400年記念祭事業構想 | 琳派400年記念祭


家康もさぞ芸術に理解があったのかという感じですが、そんなはずがなく、実際のところは光悦への警戒心から、当時は京都の辺鄙で追い剥ぎも出没する洛北の鷹峰に追いやったというのが本当のところかもしれません。

昨日は、京都国立博物館で開催されている特別展覧会「琳派 京を彩る」にと京都に出かけたのですが、行ってみるととんでもない長蛇の列で、また日を替えてと紅葉狩りに変更してしまいましたが、それにしても大人気です。なんと来館者数が、10月10日から始まり、30日(金)には来場者が10万人に達したそうです。

紅葉を見るために訪れたのが左京区一乗寺の曼殊院と圓光寺です。圓光寺の本殿玄関の、華やかな襖絵「琳派彩還 四季草花図」は、はっと目を惹きつける作品ですが、渡辺章男画伯が「琳派が21世紀に再評価され、彩還したとの設定」で描いた2002年の作品だそうです。
絵はこちらでどうぞ。
一乗寺・圓光寺。額縁庭園。 ( 京都府 ) – 今日も良い日で – Yahoo!ブログ

広告業界から足を洗い、美術評論家への道を歩み始めた岩佐倫太郎さんの著「東京の名画散歩―絵の見方・美術館の巡り方」のサブタイトルが、「印象派と琳派を見れば絵画が分かる」でした。ちなみに岩佐さんは大学の同級生です。ほんとうにわかりやすく書かれているのでおすすめします。



それにしても、芸術や文化に触れたいと思い、美術展を訪れる人びとの多さは、それだけ国民の芸術や文化への関心が高いことを物語っています。

海外からの訪日客の人びとの美術館への来場もこれから増加してくるでしょうから、美術館の設備面での強化も「ビジット ジャパン」戦略としては重要ではないでしょうか。入場者数や面積で世界のトップ・ランク入りをする美術館が東京や京都には欲しいところです。日本で入場者数がもっとも多い国立新美術館でも世界で21位に過ぎません。
誰も利用しない箱モノには随分熱心に投資してきた日本ですが、ほんとうに役立つ施設にこそもっと投資してもらいたいものです。
入館者数の多い美術館の一覧
圧倒的な人気!世界の美術館・博物館の入館者数TOP5 | RETRIP

文化のコンテンツの厚みは、日本の観光価値を支えています。世界経済フォーラム(WEF)により発表されている旅行・観光競争力レポートでは、日本は2011年の22位、2013年の14位からまたランクアップし、2015年は9位と、アジアでは唯一ベスト10入りをしています。
旅行・観光競争力レポート – Wikipedia
しかも項目評価で、もっとも高く評価されているのが、「自然・文化観光資源」、なかんずく「文化観光資源。業務代行」の項目です。
WEF(世界経済フォーラム)旅行・観光競争力レポート2015の概要 – JTB総合研究所

明治維新の折には、廃仏毀釈という文化破壊もありましたが、その蛮行からも逃れ継承されてきた日本の文化資源の豊かさには、ほんとうに感謝しなければならないですね。

株式会社ビジネスラボ 代表 大西 宏