都市部から地方部への財政移転は不要である

拙稿に対する渡瀬裕哉さんの反論を読ませて頂きました。

まだ噛み合っていないというか、噛み合わせられる文章を書かなかった私が悪いのですが。

という訳で、理解しやすいタイトルにしてみました。


実際の数字から話をさせて頂きます。

東京都武蔵野市の平成27年度予算に書かれている市税は、385億円程度。それに対し鳥取県米子市は184億円程度。

人口はほぼ同じ。2010年国勢調査で武蔵野市は13.9万人、米子市は14.8万人なので、米子市の方が多いのです。でも市税は武蔵野市が倍以上。

こうなるのは、前回書いたように市税は住民税と固定資産税が中心になっていて、お金持ちが多くて土地が高い自治体ほど、市税がたくさん徴収できるような制度になっているからです。

ではこの差をどうして埋めるのでしょうか。渡瀬さんは税率を上げればいいけど、当然、貧乏な自治体で税率を上げても、そんな所には住みたくないとおっしゃっています。そして、税収を上げるアイデアはないそうです。

これこそ、「ふるさと納税制度」みたいなものを提示してあげれば、頑張る自治体は頑張って税収を上げられます。無条件に都市部から地方に財政移転をされるより、優秀な都会人の方々がアイデアを出してあげて、財政移転を減らした方がいいのではないでしょうか。

ちょっと話はそれましたが、地方の自治体は大都市部に比べて税収力が弱い。ではどうするのか。渡瀬さんは税移転がなければ「明るい電気を物理的に灯すことすら既に困難」とおっしゃられるので、田舎では電気を使うな、と言いたいのでしょう。電気の場合は民間の電力会社が供給してますから自治体の財政力に関係ありませんが、水道は市町村が供給しています。貧乏な自治体住民は、同じ国民でありながら、満足な水道すら提供されなくても我慢しろ、というのでしょうか。

私が言いたいのはこの部分で、同じ国民でありながら、金持ちが多く住む自治体住民は社会インフラが十分に提供されて、貧乏人が多い自治体は水道整備すらままならない状況で我慢しろ、といのは、おかしい、と思うのです。

こうした自治体の財政力の差を埋めるために地方交付税制度があります。ところが、これは国税から地方に配分されるものです。だからここで国の裁量が強く働き、おかしな配分になる。だったら地方税は地方税で、例えば裕福な東京都が貧乏な自治体に、自らの意思で配分する方がいいのではないか、ということを、前回書きました。

消費税は所得税や住民税、固定資産税に比べると、遥かに税収が人口に比例します。上に書いたように、地方税は人口に比例するような性質をもつ税をあてる方が理にかなっているので、前回消費税を全額地方税に回せばいい、と書いたのです。

私が言いたいのは、金持ちから貧乏人に税金を移す必要はあるけど、都市部から地方部に移す必要はない、ということです。

現状、金持ちは大都市部に集中していますから、結果として「金持ちから貧乏人に税金を移す」ことが「都市部から地方部に税金を移す」ことになってるのです。

もっとも、その資産格差以上に財政移転が起こっているのが現状でしょうから、きちんと人口と税収の割合を明らかにして、過剰な財政移転をするべきではないと考えています。

前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師