超高齢者市場に商機あり

2015年11月16日 12:22

前回のブログ「日本企業はアジアの高齢者市場で発展する」の続編を書く。拙ブログの主題は「人口減少、少子高齢化で日本の成長力は低下する、といった厳しい見通しが目立つ一方で、ピンチはチャンス、高齢化先進国だからこそ大きなビジネスチャンスをモノにできる」というものだった。

この点で日本経済新聞が連載中の「超高齢化を生きる--人口病に克つ」が参考になった。同記事は厳しい見通しとして国立社会保障・人口問題研究所の推計を上げる。

(同推計では)2017年に75歳以上の人口(後期高齢者)が65~74歳の人口(前期高齢者)を上回り、60年には総人口の4分の1を占める。労働や消費の担い手になる元気なシニアよりも、医療や介護の需要が増す後期高齢者が中心の超高齢化社会が迫る。

だが、そこをビジネスチャンスととらえる企業も出ている。例えば資生堂は介護施設で後期高齢者(75-90代)を対象にした美容教室を開いている。化粧は老婦人の心を明るく、気分を若返らせ、化粧から遠ざかっていた人々を再度、顧客として取り戻すことができるからだ。

同時に、行政的、社会的効果が高まる。身体の健康寿命(介護の世話にならず、寝たきりにならない寿命)も伸ばすからだ。

化粧水を塗る際に腕を上げたり、化粧品のふたを開けたりすることで、握力は化粧をしない人の1・5倍に高まる。介助なしで自分でおわんを持ち、手すりを握れるようになる。試算では、化粧をすることで介護費が年1万4220円減る。仮に約600万人の要介護者全員が化粧療法を実践すれば、約850億円の介護費削減につながる計算だ。

 ほっておけば、医療・介護費はどんどん高まる。団塊の世代が75歳以上になる2025年には現在50兆円の医療・介護費は1.5倍の74兆円に膨らむという。それも市場拡大には違いないが、国民の健康寿命が伸びる方向で産業が拡大した方が国家経済の足腰が強まることは間違いない。もとより健康寿命が伸びることは国民それぞれにとっても、大いに望ましい。

元気なシニアの市場をどう拡大するかは、企業にとって大きな商機であり、好例はあちこちに見当たる。

あるフレンチレストランでは「魚介のポワレはすり身にして蒸し、牛肉のローストはペースト状にして焼く」ことで、胃腸が弱り、フランス料理を敬遠していた超高齢者を呼び戻そうとしている。使う素材や品数は通常のフルコースと同じ。調理法を変えて客に合わせるのだ。

電動の手押し車も80-90代の超高齢者のウォーキング(散歩)の活動範囲を広げている。センサーを駆使して上り坂ではモーターが車輪を回し、下り坂では自動で減速する仕組み。ハンドルに手を添えながら楽に歩ける「動く手すり」の感覚だという。IT(情報技術)、ロボット技術の発展が高齢者の活動領域を広げ、遊びや作業の機械をふやし、日本経済・社会の生産性を向上させる。

アフリカやペルーのマチュピチュ遺跡など体力的に無理と思われてきた山岳、辺境地の旅行も電動車イスの活用などで可能となり、超高齢者のツアーの幅も広がっている。それは旅行・レジャー市場の拡大を促す。
 

観光庁によると、宿泊旅行が最も多いのは60代で70代以上が最も少ない。70代が60代と同じ回数の宿泊旅行をすれば、消費が5千億円増える。 第一生命経済研究所の熊野英生(48)は個人金融資産1700兆円のうち、70代以上が持つ割合は現在の50%から25年には53%に増えるとみる。一方で、60代の資産は22%から18%に減る。

超高齢化時代のニーズに合った製品やサービスの開発・提供が内需拡大の1つのカギとなる。同時に、それは日本の後を追って高齢化の道を進むアジア諸国で市場を開拓する有力な武器となる。

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