規模の追求だけが企業のあり方なのだろうか?

2015年11月26日 10:16

アメリカの製薬大手ファイザーがアイルランドの同業大手アラガンと事実上の買収による合併をするそうです。驚くべき話はその買収金額。実に19兆7000億円であります。これにより世界最大の製薬会社が誕生するということです。ちなみに2014年の日本企業の全体のM&Aは国内外合わせても13.9兆円です。このファイザーの買収がいかに巨額かお分かり頂けると思います。

ちなみに今年はこれ以外にビールのアンハイザー・ブッシュ・インベブがイギリスのSABミラーを13兆2000億円で買収しており、もはや、10兆円台の買収はびっくりしない時代になってきたのでしょうか?

いくら株式交換方式による買収とはいえ、買収に伴い様々な付随コストは当然あるわけで買収金額が高ければ高いほどそのコストも飛躍的なものなります。それらのコスト負担を可能にしたのはやはり低金利が長く続き、資金調達をしやすい環境にあったから、とも言えるのでしょう。

ところでこのファイザーの買収の一つの理由に本社をアメリカからアイルランドに移すことで節税対策を施す、とあります。アメリカ政府がそうたやすくそれを認めていればアメリカから企業が無くなってしまい、税収が入らなくなります。この買収劇はその戦いの舞台を政府や税務当局などの承認との戦いに移すことになりそうです。

ちなみにアイルランドの法人税は12.5%、対するアメリカは35%でその差は明白。この為、アイルランドを目指すアメリカ企業が後を絶ずアメリカ国内で一部、社会問題化している中でのファイザーの挑戦状でした。これでファイザー対アメリカ政府の対立構図が明白となり、しばし大きな話題を提供してくれそうです。

さて、規模の追求は資本主義の中で確かに理にかなっています。よって、同業を買収し、市場シェアを押さえるとともに自社製品をディファクトスタンダード化させ、その支配権を握ることで圧倒的な力を発揮することが出来ます。それは価格から開発能力に至るまで可能であります。

アメリカは特に熾烈な買収合戦にエネルギーを費やしてきました。ITの世界でも自分で開発するより出来上がったものを買った方が安い、という発想がしみ込んでいます。それ故、開発する側もある程度商売が立ち上がったら愛着なく売却することがごく普通に起きており、そこで巨額の資金を得た創業者はまた新たな事業を起こす、という流れが繰り返されています。

日本でも業界再編と称して合併は数多く見られます。石油販売の会社は合併を繰り返し、もはや大手3つ、そのうち、2強(JXと出光/シェル)と1弱(コスモ)の関係まで絞り込まれています。銀行は大蔵省の時代から長い時間をかけて合併を繰り返し、都市銀行はメガバンクを中心に収まり、現在は地銀再編が進みます。コンビニ業界や小売業界でもこのような勢力地図の書き換えは年中起きており、自由競争から寡占化に伴う企業側の利益の確保が強く押し出されてきています。

その中で案外再編されないのが建設業界と自動車業界であります。ともに重層構造、雇用の受け皿といった共通点はあります。建設業になぜこれだけ多くの会社が跋扈しているかといえば買収してもその効果は知れているからであります。資本のチカラより技術力や営業力であってM&Aが魅力的な手法ではないとされます。個人的にはこの業界がかなり人間臭く、JVなどで他社との協業も日常茶飯事であることなども影響していると思います。

一方、自動車業界は大は大なりに、小は小なりに特徴を持たせて頑張っていてそれなりの販売台数と利益を生み出しているということでしょうか?多分、多くのファンがマツダとトヨタが一緒になってほしくないとか、富士重工は今のとんがった車を出し続けてほしいと思っていることでしょう。正に「小は小なり」なのだろうと思います。

規模を追求すると確かに市場制圧に伴うメリットは大きいのですが、小回りが利かないというデメリットも出てきます。マクドナルドが苦境にあえいでいるのは巨艦は簡単に方向転換から、とも言えそうです。

製薬業界では日本でもきら星のような会社もあります。例えば大阪の小野薬品工業が昨年秋から発売したオプジーボ。これはがん治療薬としては画期的なもので今までの抗がん剤の発想を180度転換したものです。現在は確か皮膚がん向けのクスリのみの発売となっていますが、今後各種がん向けのクスリ20種類程度が数年のうちに順次発売される予定です。正に我が道を行く、の好例だと思います。

日本の製薬最大手、武田薬品は世界の大手を目指して買収を進め、会社の役員構成も世界市場で戦える人材登用をしました。しかし、人の出入りもあるようで思ったように進んでいない気がします。

企業が本当にあるべき姿とは顧客にとって期待され、あってほしい姿であります。お客を無視した規模の追求は良い結果を生まないでしょう。世界の趨勢にあまり惑わされて間違った買収をして会社の屋台骨が揺らぐようなことにならなければよいと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月26日付より

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