米国スポーツビジネス界のマネジメントはこう見る --- 鈴木 友也

2015年11月27日 06:00

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毎年この時期になるとSportsBusiness Journals誌が読者アンケートを行います。SBJは、主に米国でスポーツ関連組織の経営層が読んでいる専門誌なので、これをみると米国スポーツ界のマネジメント層がどのような見方をしているのかが分かります。

SBJの読者アンケートについては、以前「最も価値のないスポンサーシップ資産は看板広告」「米国スポーツビジネスにとって最大の脅威とは?」などでも少し触れましたね。

SBJの最新号で今年の読者アンケートの結果が掲載されていたので、その中で個人的に興味深かった点を拾ってみることにします。

■イケてる(hottest)スポーツリーグを3つ挙げよ
1. NFL(70%)
2. NBA(43%)
3. NCAA(31%)

⇒やっぱりNFL人気は不動ですね。これは予想通りでしたが、学生アスリートへの報酬問題など、何かとネガティブなニュースが多かったNCAAが3位につけているのは興味深いです。まあ、それだけビジネスとして上手く行っているという評価なのでしょう。

■大学フットボールで一番問題なのは?
1. 選手の搾取(32%)
2. 学校間の収益格差(23%)
3. 怪我・脳震とう(16%)
4. 商業化(12%)
5. 観客動員数の現象(11%)

⇒「選手の搾取」と「商業化」は表裏一体の問題ですね。とはいえ、今更商業化を止めるわけにも行きませんから、方向性としては選手に適正な対価を支払う方に向かうのだと思います。問題は「どの程度」それを行うかでしょう。

■賛成?反対?
・学生選手への報酬の支払: 賛成(44%)反対(56%)
・試合中の選手へのマイク着用: 賛成(64%)反対(36%)
・ユニフォームへの広告掲出: 賛成(53%)反対(47%)

⇒まだ学生に報酬を支払うことに対してはアレルギーを感じる人が多いようです。

■次の労使協定更改時に労働争議が起こりそうなリーグは?
1. NBA(39%)
2. NFL(29%)
3. NHL(17%)
4. MLS(9%)
5. MLB(6%)

⇒かつては「世界最強の労働組合=MLBPA」を擁し、労働争議の模範のように言われていたMLBが近年の労使協調路線からMLSを下回っているのに驚きました。NBA、NFL、NHLともに現行の労使協定は10~11年間の長さで、最も早く更新時期を迎えるNFLでも2020年ですから、まだ少し先の話になりますかね。

■今年スポーツビジネス界で最も大きなニュースだったのは?
1. FIFAのスキャンダル(41%)
2. ファンタジー・スポーツの隆盛(38%)
3. トム・ブレイディとNFLの戦い(37%)
4. カレッジ・フットボールへのプレーオフ制導入(21%)
5. 女子サッカー代表のWC優勝(19%)

⇒アメリカ人がFIFAに関心を払うなんて珍しいですが、フェアであることを金科玉条とするアメリカ人は不正が大嫌いですから、「やっと捕まったか」って感じでしょうか?やぱりフットボールネタが多いですね。

■北米スポーツビジネスの最大の脅威は?
1. チケット価格の高騰(33%)
2. ユーススポーツ競技者数の現象(17%)
2. コードカッティング(有料テレビの解約)(17%)
4. 不正行為(ドーピング、ルール違反など)(12%)

⇒チケット価格の高騰は2年前の調査よりも10ポイント以上増えてますね。例えば、今年のMLBのFCI(4人家族での平均的な観戦支出)は212ドル。これでも4大スポーツの中では最も安い値です。逆説的ですが、米国のマネジメント層にチケット価格が高いという自覚があることを知れて良かったです(笑)。

■スポーツリーグで今後の収益的なのびしろがある領域は?
1. OTT・ストリーミング権(33%)
2. 新たなスポンサーシップカテゴリ・資産(29%)
3. 海外への球団拡張(20%)
4. 周辺イベント(17%)

⇒やっぱりデジタルですよね。テレビ放映権は日米でメディア環境が異なるのですが、デジタルの部分はアメリカの取り組みが大いに参考になると思います。

■最も指導力のあるコミッショナーは?
1. Adam Silver(NBA)(57%)
2. Rob Manfred(MLB)(11%)

⇒NBAは前任のDevid Sternの後光がまだあるからでしょうか。ここ10年くらいはほとんどNBAのコミッショナーがトップです。日本にいるとあまり実感ないと思いますが、「最も革新的な経営を行っているリーグ」と言えばNBAです。「MLB新コミッショナーの驚きの初仕事」で衝撃の仕事始めに触れたマンフレッドさんは、意外に評価が低いです。

■ユーススポーツの最大の脅威は?
1. 1競技への特化傾向(30%)
2. 盛り上がりすぎる両親(24%)
3. 若年層での運動時間の現象(22%)
4. 時間的コミットメントの多さ(11%)
5. 費用(10%)

⇒「専門化が進み、日本化する米国のユーススポーツ」でも書きましたが、研究者の間では複数スポーツを同時並行で経験するより、1つのスポーツに専念する方が選手の肉体的成長が阻害され、バーンアウトのリスクも高まるため、選手として大成しづらいことは周知の事実になっています。しかし、これとは裏腹に、ビジネス化するユースビジネスに親が巻き込まれ、専門化が進んでいる実態がありました。マネジメントレベルでは、この点に既に気づいているのですね。へー、って感じでした。

■どの会社のDFS(デイリー・ファンタジー・スポーツ)をやっているか?
1. DFSはやらない(80%)
2. DraftKings(11%)
3. FanDuel(6%)
4. Yahoo Sports(2%)

⇒これ分かるなぁ。DFSはデイリーと言えども時間取られるから忙しい経営者としては「そんなのやってる暇ない」ってのが本音でしょう(笑)。

とまあ、こんな感じです。アンケート結果を全て見てみたい方はSBJを購読して下さいね(笑)。


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編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2015年11月26日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部で担当)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。

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