もう一歩踏み込んだ少子化対策を

少子化対策といえば出産支援が思い浮かびます。特に「一億総活躍社会」の具体的プランとして11月26日に安倍首相が緊急対策を決め、多くの具体案が並びました。その中で少子化対策として50万人分の保育施設の整備を含め、数多くの「子供を産める環境づくり」の拡充が並んでおります。

首相のポリシーである女性の社会での活躍を促進させる流れであり、これ自体は結構なことだろうと思います。ただ、私はこれで少子化が改善するほど世の中は甘くないと思っています。

理由は一つ。首相が中心となって提言するプランのほとんどがある一つの方向に偏り過ぎているのです。それは女性を中心としたアイディアであります。

今さらこう言うのはおこがましいのでありますが、子供が出来るかどうかは男がいるかどうか、であります。よって今の政策は結婚した若夫婦が積極的に子供を作るという対策に於いては機能すると思うのですが、結婚しない男女が圧倒的に増えてきているこの世の中にどう対応するのか、ここが完全に落ちている気がするのです。

例えば先週の「一億総活躍社会」の具体プランの中にその分野をカバーするものとして「結婚に向けた地域での出会いの場の提供」「非正規労働者の正社員促進」とあります。これが誰を対象にしたプランなのか不明瞭でありますが、なんとなく女性を意識しているように感じるのは偏見でしょうか?

私が感じる最大の問題は男女の結婚観の相違ではないかと思います。一人っ子が増えた時代における最大の社会的欠陥は一人っ子は一人が好きだという傾向ではないでしょうか?その場合、唯一無二の人は誰なのかといえば、女性の一人っ子について言えば母親が圧倒的な地位を占めています。

一人っ子の特徴は甘やかされて育っていることです。その為、自分のわがままを聞いてもらえないと完全協調できない傾向が出ます。実は私も一人っ子ですし、私の周りにも結構一人っ子はいますのでそれなりに感じるものはあります。その点、女性の一人っ子の場合、自分を育ててくれた母親は自分を完全理解してくれるため、何かにつけて母親と遊んだりするのです。それこそ、ショッピングとか母親のおさがりの服を着るといった行動がごく普通に展開されています。

国立社会保障・人口問題研究所の調査で男の子、女の子、どちらの赤ん坊が欲しいか、との調査に対して女児が何と68%、男児はわずか31%(2010年調査)であります。1982年が女児48%、男児51%だったことを考えると約30年の間に価値観が大きく変わっていることが良くわかるかと思います。また、日本国内では倫理上の問題からダメですが、海外を通じて「産み分け」に挑戦する人もいるようでその場合の希望は9割が女児だというのです。

理由は「家意識が薄れ、跡取りとしての子育てから楽しむための子育てに変化したことが影響している」(相模女子大学中西泰子准教授)とあります。つまり、上述のように買い物したり、一緒にお茶したり、もしくは歳をとった時の介護なども計算しているのでしょう。

男児を欲しがる中国とさかさまの事態が生じていると言ってよいでしょう。

だいぶ前にある20代の女性が結婚観について「自分の好き勝手なライフに制約が出来るのが嫌だ。お金も、生活も、自由も実家に帰ることも…」と言っていたのですが、適度な温度の成熟社会に突入した日本に於いて「個」がよりわがままになり、フレキシビリティが無くなってきたと私は考えています。

正直申し上げると「非正規労働者の正社員促進」という政策は結婚しない女性をより多くするだけの気がします。ましてや婚活のサポートは男と女のダメ出し合戦になるのがオチな気がします。

私はこの問題は抗生物質ですぐに治療できる特効薬はないと考えています。漢方で一世代、つまり25年前後かけて改善するしかないとみています。その改善は子供にあるのではなく、親にあるとみています。親が家族の重要さをきちんと示し、そのつながりを子供の心に植え付けることが第一歩ではないでしょうか?

「うちの息子(娘)とはもう2年も会っていない」ではダメなんです。親は強制的にでも子供たちと会い続ける癖を作るべきでしょう。子供が面倒くさがるのはきちんとした躾を怠ったからではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月3日付より