2016年に起こる「金融業界の2つの価格破壊」 --- 内藤 忍

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2016年の資産運用はどうなるのか。円高になるか円安になるか、あるいは日経平均がいくらになるのかといったマーケット予想は当てるのが困難ですが、資産運用業界にどんなことが起こるのかは、ある程度確信を持って予想ができます。

2016年は「金融業界の2つの価格破壊」によって個人投資家にとって大きな恩恵がもたらされると考えています。具体的には、アセットアロケーションを使った金融資産の運用を行っている個人投資家に低コストの投資機会が幅広く提供され、より低いリスクでより高いリターン(Less Risk More Return)を実現できることになるということです。

既にその兆候は、投資信託の世界で見えています。昨年後半に、多くの投信会社がネット証券向けのインデックスファンドの信託報酬(年間にかかる管理コストのようなもの)を引き下げ、「インデックスファンドの価格破壊」が始まりました。市場平均に連動させるのがインデックスファンドですから、ファンドマネージャーの銘柄選択の能力は必要とされません。いかに市場平均と同じ運用成果を実現できるかが、ファンドの評価を左右します。

信託報酬が下がるということは、同じ運用をしていてもコストが下がった分、投資家のリターンは上がるということです。リスクを落としても、コスト分の高いリターンが実現できるということは、個人投資家にとって大きなメリットになります。

そして、投資信託の次にやってくるのが、「ラップ口座の価格破壊」です。大手証券会社や信託銀行で提供されているラップ口座は、資産運用をお任せできるというメリットはあるものの、そのコストは組み入れている投資信託のコストなど全てを積み上げると年間3%近くになります。

そこにネット証券や投資一任会社などが、インターネットでのサービスを通じて、低コストの資産運用サービスを提供すべく、本格的な参入が始まることが予想されます。もし年間の管理コストが2%下がれば、リターンは自動的に2%上がることになります。

効率性の高い金融市場では、リスクが低いのにリターンが高いという都合の良い商品はありません。ただし、コストを下げることによってリスクを抑え、リターンを向上させる資産運用は可能になります。金融商品の選択で大切な3つのことは「コスト、コスト、コスト」なのです。

1999年10月に株式売買手数料が完全自由化され、手数料が大幅に下がった時と同じような大きな変化が、資産運用業界に起こることになる。資産デザイン研究所メールで、その最新の動きも随時レポートしたいと思っています。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。